2019/01/08
防災・危機管理ニュース

IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)によるビッグデータ活用、4K・8K映像の編集など、企業が扱う業務データは近年急激に増加し、企業のデータ管理手法が根本的な変更が求められている。こうしたなか従来の自社内で構築・運用するオンプレミス型データストレージを活用しながら、新たなクラウド型ストレージを融合させ、両者の強みを生かして大量のデータを安価、安全に管理ができる「オブジェクト・ストレージ」というデータ管理サービスが注目されている。データストレージ企業の米ネットアップでオブジェクト・ストレージ部門を統括するダンカン・ムーア氏と、同社日本法人のシステム技術本部でソリューションアーキテクトを務める箱根美紀代氏に聞いた。
Q1:企業において業務データを取り巻く状況はどのような変化がありますか?
ダンカン氏(以下D):これまで企業が扱う業務データは、テキスト文書や表計算、画像など数KB~数MBと小さなデータ容量のファイルを扱うのがほとんどでした。そして、従来は小容量ファイルをフォルダの階層構造で管理する「ファイル・ストレージ」が主流でした。
これが最近では4K・8Kの高解像度の画像・動画などデータ容量の大きいファイルを扱うことが多くなり、IoT機器による膨大なログ生成やそれを活用したAI分析など、大量データを収集し活用するようになってきたため、データ容量が急速に増大しています。これにより1企業が扱う業務データ量は、年間数百TBやPBに及ぶようになっています。
そのため、従来の「NAS(Network Attached Storage)」や「SAN(Storage Area Network)」などの「ネットワークストレージ」では、物理サーバーによってファイル1つあたりのデータ容量の上限や、保存できるファイル数に上限があり、現在のような巨大データ容量を取り扱う環境に対応できなくなりつつあるというのが現状です。
またタブレット・スマートフォンなどモバイル端末やクラウドサービスの普及により、あらゆるデータにインターネット経由でアクセスする形態が一般的となり、アクセスが容易な一方で情報漏えいのリスクも高まっています。また法定保存文書や個人情報保護など法規制も厳しくなり、データの取り扱いが経済損失や法令遵守に大きく関わるようになってきています。
Q2:新しいデータ管理の手法「オブジェクト・ストレージ」の仕組みとメリットはどのようなものですか?
D:ストレージの歴史をたどると理解しやすいと思います。従来の「ファイル・ストレージ」は、階層構造になったフォルダにファイルを格納する「ディレクトリ構造」で管理するのに対し、「オブジェクト・ストレージ」はデータを「オブジェクト」という単位で扱うデータ管理方法です。各オブジェクトにはIDとメタデータをつけて管理することで、ファイルが階層構造を持たず、フラットに管理できるのが特長です。
データをオブジェクト単位で管理する最大のメリットは、重要なデータを保護することにあります。1つのサーバー上に格納されたデータは随時複製コピーされ、複数拠点のサーバーに分散配置されるという工程を自動的に行います。データの重要度に応じて、重要度の高いデータはコピーする数や分散配置する拠点数を増やし、重要度の低いデータはコピーの数や保存期間を減らしたりと調整できるようになります。同時に複数あるデータを参照できるので、読み取り性能を高速化できるメリットもあります。
もう一つの大きな特長は、専用のソフトウェアを使用することで、関連するあらゆる物理サーバーを繋ぎ合わせた一つの仮想サーバー空間(ネームスペース)を構築できることです。これにより、たくさんの支社やグループ会社をもつ企業が容易にデータを一元管理・活用できるようになります。これは国内に限らず、全世界中の拠点を繋げて、まるで1つのサーバーのように運用することができます。
さらにこれまでの「ファイル・ストレージ」では、物理サーバーの容量が足りなくなれば、新しいサーバーを購入し、そちらにデータを移し替える必要がありました。この点でも「オブジェクト・ストレージ」の特長を活かすことで、既存のサーバーを資産としてそのまま活用しながら、新しいサーバーを追加して、容量を拡張できます。
- keyword
- オブジェクトストレージ
- IoT
- AI
- ハイブリッドクラウド
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方