減災ソフトウェア開発に関わる一日会議2015

「減災ソフトウェア開発に関わる一日会議2015」が10月3日、東京都内で開催された。テーマは「ITに関する減災につながる行動、仕組みづくりの『パターン』を探る一日」。国立研究開発法人産業技術総合研究所主任研究員の江渡浩一郎氏ら同会議実行委員会の呼びかけによるもので、2013年から開始し、今年で3回目。

サバイバル・ランゲージについてプレゼンする慶応義塾大学総合政策学部の井庭崇准教授

会議のテーマとなったパターン・ランゲージとは、ウィーン出身の都市計画家、建築家であるクリストファー・アレグザンダー氏が提唱する理論。何かを作り上げるときや実践する時の、状況に応じた判断の感覚(センス)を関係者が共有・活用するための手法で、同氏は人々が「心地よい」と感じる環境(都市、建築物)を分析して253のパターンを抽出し、都市計画の作成に生かした。パターン・ランゲージの手法はその後、ソフトウェア開発などさまざまな分野に活用されているという。

会議では、慶応義塾大学総合政策学部の井庭崇准教授からパターン・ランゲージの解説が行われた後、この手法を減災に役立てるために独自開発したサバイバル・ランゲージについて発表した。「海外で開催されたパターン・ランゲージの学会でサバイバル・ランゲージを発表したところ、次の年にはオレゴン州の津波対策についてのサバイバル・ランゲージを作ったチームも現れた」と、井庭氏は研究に自信をのぞかせる。

井庭氏らが開発したサバイバル・ランゲージ・カード
ワークショップの様子

会議ではその後、一般社団法人情報支援レスキュー隊 IT DART 代表理事の及川卓也氏、村上明子氏から先月の関東・東北豪雨に対するIT DARTの活動内容報告や、南相馬市議会議員の但野けんすけ氏から東日本大震災時の同市の状況報告があったほか、日本総合研究所の東博暢氏からは災害時医療・救護のオペレーションについて現状と問題点が発表された。午後は参加者が3つのグループに分かれ、アンカンファレンス形式でワークショップを開催。それぞれの立場から減災のためのパターン・ランゲージの作成に取り組んだ。

この会議の成果は、文部科学省受託研究「都市災害における災害対応能力の向上方策に関する調査研究」において開発する「マイクロメディアサービスにおけるマッシュアップ・双方向インタラクション技術」のなかで、災害時におけるボランティアおよびプロボノによるマイクロメディア構築活動の支援・促進手法の調査報告として反映する予定だ。

□井庭研究室の「サバイバル・ランゲージ」ウェブサイト
http://ilab.sfc.keio.ac.jp/survival/index.html