株式会社新建新聞社は3月13日、『震災復考~安全な住まいは可能か~』を発刊した。

今年1月で阪神・淡路大震災から20年、3月で東日本大震災から4年が経過した。この間、住まいの安全はどこまで高まったのか。何が壊れ、何が残り、何が変わったのか。復興を追体験することで住まいを取り巻く現在の技術環境や産業構造、法制度や社会システムを反省し、いつか起こる首都直下地震や南海トラフ巨大地震への備えとすることが、この本の主眼となっている。

2011年の東日本大震災の直後、著者の樫原健一氏は住宅専門紙「新建ハウジング」に『斜面の防災都市に託す、夢』を寄稿。建築技術の限界を十分知りつつ、それでもなお災害に強い住まいとまちを目指して歩むことをあきらめない技術者の言葉だった。3.11は全ての建築関係者にとって、終焉ではなく、はじまりだったのだ。

本書は2012年6月から2013年9月までの1年半にわたって「新建ハウジング」紙上で展開された思考の旅の記録だ。建築構造力学を根底におきながらも、難解な解説を排し、経済学、社会学、政治学、歴史学、生活学と幅広い観点から平易な言葉で展開される論考は、災害復旧期の貴重な記録であり、住まいの本質や暮らしの安全を考える格好の教材であり、また日本列島における災害と人間の壮大な物語でもある。

本編の後には「私家版東日本大震災レポート」を収録。著者ならではの視点でつづられる、震災復旧の貴重な資料となっている。建築士をはじめとする住宅関係者をはじめ、一般の方にもおすすめできる1冊だ。

新建オンラインストアで販売中。

著/樫原健一
発行/新建新聞社
定価/1620円(本体1500円+税)
四六判224頁
2015年3月13日発行


 【コンテンツ】
第一部 震災から浮上した住まいをめぐる諸問題
 震災と住まいについて
 首都を襲った歴史地震
 都市直下型地震の衝撃
 巨大地震がもたらす広域災害

第二部 サバイバル列島の住まい
 日本列島の人類史1~4

第三部 震災ルネサンスの社会
 震災を回避するために
 震災から立ち直るために
 震災から復興するために
 震災から再生する社会

第四部 木造技術のフロンティア
 性能規定型の耐震設計法
 耐震補強技術
 新しい耐震技術
 これからの住まいと耐震技術

私家版 東日本大震災レポート
 東北地方太平洋沖地震発生
 仙台とその周辺地域
 三陸海岸の被災地
 斜面防災都市可能性