徳島県美波町 南海トラフにそなえ
 

南海トラフ巨大地震などで津波が発生したことを想定し、地上波テレビ放送やICカード、スマートフォンなどの情報通信技術(ICT)を組み合わせた避難訓練が2月7日、美波町阿部(あぶ)地区で行われた。同町では6日に震度4を観測する地震があったばかりで、参加した住民や保育園児ら約180人は真剣な表情で避難場所に向かっていた。

ICTを活用した訓練は2013年10月、2014年1月に次いで3回目。情報通信技術を地域の防災・減災などに役立てる総務省の「ICT街づくり推進事業」の一環として行われている。

美波町で、ICT活用の津波避難訓練が行われることになったのは、津波による浸水想定値が20.9mと、県下で一番高いと指摘されているから。阿部地区は、海岸に細長く面し、平坦地は少ない。南海トラフでの地震が発生した場合、最短12分で津波の第一波が到達し、徳島県の想定では最大20.9メートルの津波が来襲する可能性がある。

今回は、紀伊半島沖を震源とする最大震度7の地震が発生し、地区に高さ20メートルの津波が押し寄せるとの想定で実施。

阿部地区の各家庭のテレビはインターネットに接続されており、午前9時半、四国放送のテレビ視聴画面に「美波町からのお知らせ 訓練」「避難訓練開始です」などの字幕と音声が流れ、住民らは事前に性別、血液型、年齢などの個人情報を登録したICカードを持って高台にある防災広場に向けて避難を開始。途中に設けられたチェックポイントでは、スマホを持った住民が待機し、スマホで避難者のICカードの情報を読み取って安否確認をした。

避難者のデータはスマホを通じて直ちに集約され、149人が避難したことが確認された。避難が完了していない住民は避難状況未確認の表示がモニター画面に表示されるので、誰がどこにいるか、逃げ遅れている人は誰であるかも把握できるので救助に向かうこともできる。また、テレビと連動した避難システムは、 平常時には高齢者宅のテレビの視聴データから異変を察知した際に、遠隔地の家族や民生委員等への連絡にも役立つという。

阿部自主防災会の蔭谷忠義会長は「スマホやICカードを使った訓練は今の時代に合っており、若者も参加しやすいのでは」と話していた。

県などは、訓練で得られたICカードの情報を分析するなどして、住民らの行動を検証し、来年以降も訓練を続けたいとしている。