シリアのアサド政権を崩壊に導いた反体制派の主力組織「シャーム解放機構」(HTS)は、2011年以降の内戦下に結成された国際テロ組織アルカイダ系のイスラム過激派組織「ヌスラ戦線」を前身とする。16年にアルカイダから離脱したとされる。北西部を拠点とし、3万人規模の戦闘員が参加するとの報道もある。
 米国などは、HTSを国際テロ組織に指定している。日本の公安調査庁などによると、17年にシリア北西部イドリブ県を制圧した。しかし、政権軍やその後ろ盾のロシア軍の反撃で、勢力圏は次第に縮小。20年3月にイドリブ県で、反体制派を支援するトルコとロシアが停戦に合意した。
 内戦はこう着状態が続いているとみられていたが、今年11月下旬にHTS主体の反体制派が攻勢を強め、国内の主要都市を相次いで制圧。今月8日、首都ダマスカス「解放」を宣言した。HTSは20年の停戦以降、戦闘部門の強化に力を入れていたという。
 中東の衛星テレビ局アルジャジーラなどによれば、HTS指導者のジャウラニ氏は1982年、サウジアラビアで生まれた。シリア人の両親と共にシリアへ戻った後、イラクでアルカイダ系組織の戦闘員として米軍との戦闘に参加。シリア内戦勃発を受けて帰国し、ヌスラ戦線指導者として参戦した。
 HTSは当初、イスラム法の厳格な運用による統治を主張。異教徒など少数派を弾圧していると、国際社会から批判されていた。
 ただ、ジャウラニ氏は今月5日、米CNNテレビのインタビューで、蜂起の目的はアサド政権打倒だと強調した上で「一人だけで決めてしまうのではない統治機関を創設することが重要だ」と強調。「アサド後」の新政権樹立に当たっては、各勢力と連携する考えを示唆している。 
〔写真説明〕8日、ダマスカスのモスク(イスラム礼拝所)で演説する「シャーム解放機構」(HTS)の指導者ジャウラニ氏(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)