鉄鋼や化学製品の生産過程で排出された大量の二酸化炭素(CO2)を船で運び、地中に貯留するプロジェクトが政府主導で動きだした。政府は民間企業と、運搬船に関する規格共通化や液化したCO2をためておくタンク開発などを検討する協議会を設立。今年度中に共通化に向けた仕様をまとめ、2030年までに回収したCO2を地中に埋める「CCS事業」商用化を目指す方針だ。
 CCSは生産過程でのCO2排出が避けられない鉄鋼や化学、セメント産業などで脱炭素化を達成するための中核技術と位置付けられている。地中貯留の候補地として、アジアではマレーシアやインドネシアで天然ガス採掘後、空になったガス田などが有力視されている。韓国やシンガポールもこれらの国への輸送を計画しており、日本としては官民で連携し船舶規格の共通化などでの主導権を握りたい考えだ。
 協議会は、三菱造船(東京)や日本郵船、日本製鉄、太平洋セメントなどで構成。造船や海運に加え、排出側も参加しているのが特徴だ。参加企業からは規格共通化について「CCSバリューチェーンの実現と経済性向上が見込める」(造船大手)との声が聞かれる。
 工場や発電所などで排出される大量のCO2を液化して輸送するには、低温・低圧状態を保つ必要があるが、温度・圧力の管理やタンク開発の技術がまだ途上。政府は10月から苫小牧(北海道)~舞鶴(京都府)間で、液化CO2の船舶輸送に関する実証実験を開始。26年度までに輸送技術の確立を目指す。
 CO2の貯留の適地は国内よりも、ガス田の多い東南アジアに多いとされる。政府は海外輸送に先立ち、まずは国内での貯留技術確立を急ぐ方針で、25年度には、国内5カ所の有望な貯留地のいずれかで試掘を実施。民間企業の投資判断材料となる経済合理性がどの程度見込めるかを算出したい考えだ。 
〔写真説明〕液化した二酸化炭素(CO2)の輸送技術の確立に向け、苫小牧~舞鶴間を航行する実証船(NEDO/山友汽船提供)

(ニュース提供元:時事通信社)