2024/11/26
防災・危機管理ニュース
鉄鋼や化学製品の生産過程で排出された大量の二酸化炭素(CO2)を船で運び、地中に貯留するプロジェクトが政府主導で動きだした。政府は民間企業と、運搬船に関する規格共通化や液化したCO2をためておくタンク開発などを検討する協議会を設立。今年度中に共通化に向けた仕様をまとめ、2030年までに回収したCO2を地中に埋める「CCS事業」商用化を目指す方針だ。
CCSは生産過程でのCO2排出が避けられない鉄鋼や化学、セメント産業などで脱炭素化を達成するための中核技術と位置付けられている。地中貯留の候補地として、アジアではマレーシアやインドネシアで天然ガス採掘後、空になったガス田などが有力視されている。韓国やシンガポールもこれらの国への輸送を計画しており、日本としては官民で連携し船舶規格の共通化などでの主導権を握りたい考えだ。
協議会は、三菱造船(東京)や日本郵船、日本製鉄、太平洋セメントなどで構成。造船や海運に加え、排出側も参加しているのが特徴だ。参加企業からは規格共通化について「CCSバリューチェーンの実現と経済性向上が見込める」(造船大手)との声が聞かれる。
工場や発電所などで排出される大量のCO2を液化して輸送するには、低温・低圧状態を保つ必要があるが、温度・圧力の管理やタンク開発の技術がまだ途上。政府は10月から苫小牧(北海道)~舞鶴(京都府)間で、液化CO2の船舶輸送に関する実証実験を開始。26年度までに輸送技術の確立を目指す。
CO2の貯留の適地は国内よりも、ガス田の多い東南アジアに多いとされる。政府は海外輸送に先立ち、まずは国内での貯留技術確立を急ぐ方針で、25年度には、国内5カ所の有望な貯留地のいずれかで試掘を実施。民間企業の投資判断材料となる経済合理性がどの程度見込めるかを算出したい考えだ。
〔写真説明〕液化した二酸化炭素(CO2)の輸送技術の確立に向け、苫小牧~舞鶴間を航行する実証船(NEDO/山友汽船提供)
(ニュース提供元:時事通信社)

防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
-
新任担当者でもすぐに対応できる「アクション・カード」の作り方
4月は人事異動が多く、新たにBCPや防災を担当する人が増える時期である。いざというときの初動を、新任担当者であっても、少しでも早く、そして正確に進められるようにするために、有効なツールとして注目されているのが「アクション・カード」だ。アクション・カードは、災害や緊急事態が発生した際に「誰が・何を・どの順番で行うか」を一覧化した小さなカード形式のツールで、近年では医療機関や行政、企業など幅広い組織で採用されている。
2025/04/12
-
-
-
防災教育を劇的に変える5つのポイント教え方には法則がある!
緊急時に的確な判断と行動を可能にするため、不可欠なのが教育と研修だ。リスクマネジメントやBCMに関連する基本的な知識やスキル習得のために、一般的な授業形式からグループ討議、シミュレーション訓練など多種多様な方法が導入されている。しかし、本当に効果的な「学び」はどのように組み立てるべきなのか。教育工学を専門とする東北学院大学教授の稲垣忠氏に聞いた。
2025/04/10
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方