2024/08/03
防災・危機管理ニュース
【ニューヨーク時事】力強さを保ってきた米国経済が急激に悪化しているとの不安が引き金となり、金融市場が「逆回転」を始めた。人工知能(AI)ブームを背景としたハイテク株買いや、日米の大幅な金利差を前提とした円売り・ドル買いなど、昨年来の流れに急ブレーキがかかり、先行き不透明感が高まっている。
「米連邦準備制度理事会(FRB)は利下げを始めるべきだった」。FRBの元エコノミストで、失業率の推移から景気後退入りを見極める手法を考案したことで知られるクローディア・サーム氏は2日、米メディアのインタビューで、FRBは景気を冷まし過ぎないよう、先月末の金融政策会合で利下げを決めた方が良かったとの見方を示した。
サーム氏の手法は、直近3カ月の失業率の平均が、過去12カ月間の最低値を0.5ポイント上回った場合に景気後退入りのサインと見なす。2日発表された7月の米雇用統計で失業率が4.3%に上昇し、この基準を上回ったことで、市場では景気懸念が急速に拡大。優良株で構成するダウ工業株30種平均は一時900ドル超安となった。
邦銀関係者はこれまでの金融市場について、「米金利が高止まりする中でも強い成長が見込めるとして、半導体大手エヌビディアなどAI関連株が買われてきた」と説明。「日銀の利上げにもFRBの利下げにも時間がかかるとの想定で、投機筋が円売り・ドル買いのポジションを積み上げてきた」と語る。
雇用統計など相次ぐ低調な米経済指標を踏まえ、市場参加者の間ではFRBが9月に政策金利を通常の0.25%でなく、0.50%引き下げるとの観測が強まる。日銀は先月末、追加利上げに踏み切った。邦銀関係者はAI株買いや円売りのトレンドは「いったん終わった」と分析する。
一方、日系大手証券の担当者は「米企業の業績は底堅く、実際そこまで景気が悪いわけではない」と指摘。ただ、市場心理が悪化していることから、「しばらくは経済指標に大きく振り回される状態が続く」との見通しを示した。
〔写真説明〕ニューヨーク証券取引所=2日、米ニューヨーク(EPA時事)
(ニュース提供元:時事通信社)

防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを事業化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方