【シドニー時事】オーストラリアの養鶏場で鳥インフルエンザの感染が広がり、卵が不足している。大手スーパーが客の購入量に上限を設けるなど対策に追われた。被害の大半は放し飼いのニワトリから出ており、過密な鶏舎飼育から自然環境に近い放し飼いに転換していく流れに暗雲が垂れ込めている。
 南半球の冬に当たる6月、豪東部ニューサウスウェールズ、ビクトリア両州などで鳥インフルの感染が急拡大。これまでに約200万羽のニワトリが処分された。
 卵が品薄となったため、2大スーパーのウールワースとコールズは両州など広範囲で、「1人当たり2パックまで」という購入制限に踏み切った。また、ファストフード大手マクドナルドは、卵を使った朝食メニューの提供を1時間半短縮し、午前10時半で終えることにした。
 今回の鳥インフルのウイルスは野鳥を介して広がったため、放し飼いの養鶏場が深刻な打撃を受けた。放し飼いで産まれた卵は、味が濃厚で臭みが少ないとされ、近年、消費者の間で人気が高まっている。動物福祉の観点からも、豪政府は2036年までに鶏舎飼育を廃止する方針を打ち出し、放し飼い化を推奨していた。
 しかし、放し飼いが鳥インフルに対して弱さを持つことが浮き彫りとなった。養鶏業者からは「鶏舎飼育も残す必要がある」との声が出ている。今後、リスクをどう分散させるかが課題となりそうだ。 
〔写真説明〕卵の購入量を「1人当たり2パックまで」に制限したスーパーの売り場=2日、オーストラリア・シドニー

(ニュース提供元:時事通信社)