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ハッキングされた乗り物が暴走するというプロットが多くの映画やドラマでも見られるが、現実世界でも目立つようになってきた。それは突飛なことなのか!? そして、サイバーセキュリティにも突飛なアイデアが必要なのだろうか?

ハッキングされ暴走する

近頃、英国では公共放送BBCで放映されたハッキングされて暴走する電車に乗り合わせた人たちの人間模様を描いたドラマが話題になっている。

もちろん、架空のストーリーとして描かれた作品ではあるが、奇しくもこの1カ月ほどの間にロンドン交通局や主要ターミナル駅のシステムがハッキングされるなどの事件が発生しており、単なるフィクションではなく、私たちが直面するリアルな脅威であることを示している。

サイバー攻撃による鉄道システムの混乱は、公共の安全と経済活動に重大な影響を与える可能性さえあるが、なぜ鉄道システムがサイバー攻撃のターゲットとなっているのか、今回はいくつかのケースを考察していく。

サイバー攻撃による影響は

鉄道システムへのサイバー攻撃は近年目立つようになっており、2022年にデンマークの鉄道会社がサイバー攻撃を受けた際には、一時的に運行が停止した。このサイバー攻撃では鉄道の運行管理システムが標的となり、システムが停止したことで列車の運行が不可能となった。幸いにも、この攻撃による人的被害は報告されなかったが、数時間にも及ぶ鉄道の停止は数千人の乗客に影響を与え、国全体の経済活動にも甚大な影響を及ぼすこととなった。

2020年にインドで鉄道システムがサイバー攻撃を受けた際には、鉄道の予約システムが標的とされ、オンラインでの予約サービスが停止した。その結果、膨大な数の乗客が予約を行えなくなり、駅での混乱が生じることとなった。

また、駅での混乱ということでいえば、2017年にドイツの鉄道会社がランサムウェア攻撃に遭った際、駅の電光掲示板が動作しなくなったことで乗客に対する情報提供が停止した。このことによって直接的な運行停止は発生しなかったものの、情報の不提供によってドイツ国内広範で混乱が生じた。

これらのケースからも分かるように、鉄道システムがサイバー攻撃を受けた場合、その影響は広範かつ深刻なものとなる。鉄道の運行停止や遅延は、日常的に鉄道を利用する通勤者や旅行者に直接的な影響を及ぼし、さらにビジネスや学校への影響、場合によっては緊急時の医療輸送にも支障をきたすことさえある。

加えて、サイバー攻撃によるデータ流出やシステムの損害は、鉄道会社に対して高額な復旧費用や信頼性の低下をもたらす可能性もあり、公共交通機関の信頼性が損なわれることは利用者の信頼を失うだけでなく、経済全体にも悪影響を与える。