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AI技術の急速な発展は芸術から選挙まで、さまざまな活動に創造と破壊をもたらしている。AIと人間の共生に向けた重要な課題を多角的に考察し、その先にある未来について探る。

AIアートと芸術

壮大な宇宙空間でオペラが演じられる様子を描いた “Théâtre D'opéra Spatial(宇宙オペラ劇場)”という作品が、米国で開催された芸術コンテストの絵画部門で入賞したことで物議を醸したのは2022年のことだ。

何故か?

それは当時急速に身近になり始めていた「生成AI」によって描かれた作品が、初めて賞を受賞したことへの賛否両論が巻き起こったからだ。[1] [2]

この生成AIとは大量のデータを学習することで、人間のように自然な文章や画像、音声を生成できる技術である。その高度な文章生成能力は、OpenAIの開発した大規模言語モデル「GPT-3」が2022年に発表され注目を集めた。[3] また、「DALL-E」や「Stable Diffusion」などの画像生成モデルが登場したことで、AIによる芸術的な創造の可能性も広がっていった。

しかしながら、人間が創造性を持ってAIに依頼しなければ芸術的なものは描かれないことから、AIは人間の創造性を拡張するツールであるという意見もある。実際、米国で入賞した作品をAIに依頼するにも、メディア、カラーパレット、ストロークパターン、ブラシサイズなどの様々なパラメーターを設定する必要がある。

ところで、人間のアーティストのスタイルでアートを生成するようAIに依頼することもできる。それは生成AIが学習に用いる大量のデータで人間による作品を利用しているためである。当然、このことへの批判的な意見も多い。

人間の創作物とAIの生成物を区別する必要性や、AIの学習に使用されたデータの著作権問題など、法的・倫理的な課題が指摘されている。

同時に、AIアートの市場価値は高まりつつあり、これは生成AIではなく敵対的生成ネットワーク(GAN)と呼ばれるAIアルゴリズムによって描かれた作品であるが、$432,500(およそ5,000万円)で2018年に落札された作品もある。[4] この作品は、14世紀から20世紀にかけて描かれた15,000枚の肖像画を学習して描かれている。