ロシアと北朝鮮が首脳会談で有事の際の相互支援を定めた新条約を結んだことを受け、日本政府はロシアから北朝鮮への軍事技術移転が広がる恐れがあるとみて警戒を強めた。政府関係者は「東アジアの安全保障リスクが高まる」と危機感を表明。米韓両国と連携して対応する方針を示した。
 林芳正官房長官は20日の記者会見で、ロシアのプーチン大統領が国連安全保障理事会決議違反になり得る北朝鮮との軍事技術協力を排除しなかったと指摘。「わが国を取り巻く安保環境に与える影響の観点から深刻に憂慮している」と述べた。
 自衛隊制服組トップの吉田圭秀統合幕僚長も会見で「力による現状変更を試みる国同士が連携することはゆゆしき問題だ」と強調した。政府内には、自衛隊と米韓両軍の合同演習拡大も必要だとする声が出ている。
 外務省関係者はロ朝の立場について、「ウクライナ侵攻を続けるロシアは武器を供与してもらいたい。北朝鮮は衛星打ち上げ技術などを得たい」と分析。こうした思惑が一致した結果が、このところ目立つロ朝の蜜月ぶりだとの見方を示した。
 安保理常任理事国のロシアは対北朝鮮制裁の実施状況を監視してきた専門家パネルの任期延長に拒否権を発動。パネルは今年4月末で事実上の廃止に追い込まれ、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮への圧力は弱まったとみられている。
 日本人拉致問題への影響を懸念する声も日本側にある。北朝鮮は弾道ミサイルなどを提供する見返りにロシアから食料なども得ているとされる。対日交渉に積極的に応じない可能性が高まるとして、政府関係者は現状について「日朝協議が進む感じはしない」と語った。 
〔写真説明〕記者会見する林芳正官房長官=20日、首相官邸

(ニュース提供元:時事通信社)