2024/06/19
事例から学ぶ

自動車やバイクなどの重要部品の生産を手がけるミクニ(東京都千代田区、生田久貴代表取締役社長)は、2014年より仕入れ先の企業とともにサプライチェーンを強化してきた。主要サプライヤーで構成される協力会「風の和」にBCP分科会を設置し、協力会社のBCP策定を支援。現在は協力会社間でBCPを教え合うまでに成長している。
❶企業として明確な意思表示
・サプライヤー協力会にBCP専用の会を設置することで、BCPの重要性を明示
❷サプライヤー企業が協力し合える環境
・同業者だけの集まりだとライバルを意識するために、多様な業種で会を構成する
❸双方向のコミュニケーションを充実
・サプライヤーの表彰制度や親睦の「場」を多数設ける
長期的な取引のために

サプライヤーのBCP策定を支援し、サプライチェーンの強化を果たしている企業がある。自動車部品などを製造するミクニだ。取り組みが特徴的なのは、仕入れ先である協力会社が率先して、別の協力会社のBCP策定を支援している点。
同社執行役員でサプライチェーン本部・調達担当を務める渡部修氏は「サプライチェーンが強固でないと競争に勝てない。協力会社へのBCPの策定支援もその対策の一つ」と語る。
同社がサプライヤーのBCP策定支援を考えるきっかけになったのは、2011年 10月。タイを襲った大洪水だった。アユタヤ県にあるミクニ(タイランド)カンパニーリミテッドの工場が完全に水没し、生産が完全に停止。顧客の協力で復旧に取り組む一方で、他の工場で補完しながら供給するなどの対応に追われたという。
一部の生産が再開するまでに約2カ月を要した。渡部氏は「サプライヤーとして供給を止めたことで、顧客に迷惑をかけた。サプライチェーン一体のBCPの重要性に気づかされたのがこのときです」と振り返る。
そこで、ミクニは協力会社のBCP策定支援のために、サプライヤーが集まる協力会「風の和」の中にBCP分科会を2014年に設置。サプライヤーにBCP策定を持ちかけた。
仕入れ先の協力会は、ミクニが自転車や自動車の部品輸入から部品の製造に事業を発展させた90年前ごろから存在するという。2代、3代にわたって取引を続ける企業も少なくない。
ミクニが協力会社と長期的な取引を続けるには理由がある。同社が製造する、主要生産品の一つは自動車やバイクの重要保安部品。走る、止まるといった基本的な走行に関連し、トラブルが発生した最悪のケースでは暴走や火災のように人命に関わるような部品だ。
「このような部品を製造するうえで重要なのが、なるべく変化を発生させずに、同じ物を継続してつくること」と渡部氏は説明する。
自動車やバイクの重要部品の製造では、工程の変化はトラブルの発生リスクを高める可能性があるため、なるべく避ける必要がある。しかも、供給期間は1年や5年の単位ではない。自動車本体の生産が終了しても修理用の部品保持のため、20年以上の生産を求められることもあるという。
「だからこそ、風の和を通じて協力会社と良好な関係性を維持してきた。今後も長期的な取引を続けるには、BCPを策定してもらうことが不可欠でした」
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