2024/06/15
防災・危機管理ニュース
技能実習に代わる外国人材受け入れの新制度「育成就労」を創設する改正入管難民法などが14日、参院で可決、成立した。「看板を掛け替えただけ」。外国人労働者の待遇改善を期待した支援者らは、新制度の実効性に疑問を呈し、冷ややかに受け止めた。
新制度では、原則認められていなかった「転籍」(転職)制限が緩和される。ただ、転籍可能となるのは就労期間3年のうち、最長で2年が経過してからで、業務は同じ分野に限るなどの要件がある。
NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」の鳥井一平共同代表理事は「依然として会社を辞めたり、職業を選んだりすることができる労働者の権利を制限している」と批判する。
外国人労働問題に詳しい指宿昭一弁護士も「就労期間が残り1年では、転籍を受け入れる企業はないだろう」と実効性を疑問視。「看板を掛け替えただけで、『奴隷制度』という批判をかわすために作ったとしか思えない」と憤る。
出入国在留管理庁が2022年に公表した実態調査では、来日前に技能実習生が母国で送り出し機関に支払った手数料などの費用は平均約52万円に上る。借金を抱えるケースもあり、過酷な労働環境でも耐えざるを得ない状況につながるとされる。
指宿弁護士は「国際的にも、国内法でも労働者から手数料を取ることは禁止されている」と指摘。労働者に代わって企業が負担する「ゼロフィー」の取り組みが国内で広まりつつあるものの、「労働者からの手数料徴収は禁止すべきだ」と訴えた。
今回の新制度創設に合わせ、改正法には故意の税金滞納など永住許可の取り消し理由を拡大する条項も加えられた。
この条項について、鳥井氏は「永住者の不安を助長し、『永住が適正ではないのではないか』というヘイトスピーチをあおることになる」と強い懸念を示す。指宿弁護士も、条項の必要性や正当性を示すデータはないとし「多文化共生の理念に反している。外国人に対する過剰かつ差別的な制裁だ」と厳しく批判した。
(ニュース提供元:時事通信社)
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