2024/06/01
防災・危機管理ニュース
【ニューデリー時事】インド総選挙は6月1日、投票最終日を迎える。2014年に成立したモディ政権下の10年で、民主主義の柱とされる報道の自由が損なわれたとの懸念が高まっており、選挙結果に加え、同国の民主主義の行方にも注目が集まっている。
「記者や独立系メディアに対する攻撃は前例のない規模だ。モディ政権の(次の)3期目でインドの民主主義は終わりを迎えるだろう」。調査報道記者のアナンド・マングナレ氏(36)は現状をそう嘆いた。
マングナレ氏は昨年8月、国際監視団体「組織犯罪・汚職報道プロジェクト」(OCCRP)の一員として、新興財閥アダニグループに関わる違法株取引疑惑の記事を執筆した。アダニは政権との近さが指摘され、創業者はモディ首相と同じく西部グジャラート州出身だ。
アダニは不正を否定。記事公表後、マングナレ氏は同州の警察から出頭を命じられた。記事は虚偽と主張する人物からの訴えが理由という。裁判所の命令で拘束は免れている状態だ。
同氏の携帯端末には情報を抜き取るスパイウエアが仕込まれていたことが判明。このスパイウエアはテロリストの追跡などを目的に開発され、販売先は政府機関に限られる。
インド政府が仕込んだかは不明だ。ただ、国際人権団体などの調査によれば、感染したのはマングナレ氏がアダニに質問を送った直後だった。同氏は「誰が仕込んだのか理解するのは難しくない」と話す。
国際ジャーナリスト団体「国境なき記者団」(RSF、本部パリ)が発表した24年の報道の自由度ランキングでインドは180カ国・地域中159位。モディ政権が発足した14年の140位から悪化傾向にある。
RSFは、記者への暴力などに加え、政権に近い少数のコングロマリット(複合企業)によるメディアの寡占化が進んだことで「世界最大の民主主義国」の報道の自由が危機にひんしていると警鐘を鳴らす。アダニは22年、政権に批判的な報道姿勢で知られた民放NDTVを買収した。
モディ氏はこうした見方に反論。米誌ニューズウィークのインタビューで「インドのような民主主義国が前進し機能しているのは、フィードバックの仕組みが活発に働いているからだ。メディアは重要な役割を果たしている」と強調した。
〔写真説明〕インドの調査報道記者アナンド・マングナレ氏(同氏提供・時事)
〔写真説明〕インドのモディ首相=15日、西部ムンバイ(AFP時事)
(ニュース提供元:時事通信社)
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/01/07
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/01/05
-
-
-
-
-
能登の二重被災が語る日本の災害脆弱性
2024 年、能登半島は二つの大きな災害に見舞われました。この多重被災から見えてくる脆弱性は、国全体の問題が能登という地域で集約的に顕在化したもの。能登の姿は明日の日本の姿にほかなりません。近い将来必ず起きる大規模災害への教訓として、能登で何が起きたのかを、金沢大学准教授の青木賢人氏に聞きました。
2024/12/22
-
製品供給は継続もたった1つの部品が再開を左右危機に備えたリソースの見直し
2022年3月、素材メーカーのADEKAの福島・相馬工場が震度6強の福島県沖地震で製品の生産が停止した。2009年からBCMに取り組んできた同工場にとって、東日本大震災以来の被害。復旧までの期間を左右したのは、たった1つの部品だ。BCPによる備えで製品の供給は滞りなく続けられたが、新たな課題も明らかになった。
2024/12/20
-
企業には社会的不正を発生させる素地がある
2024年も残すところわずか10日。産業界に最大の衝撃を与えたのはトヨタの認証不正だろう。グループ会社のダイハツや日野自動車での不正発覚に続き、後を追うかたちとなった。明治大学商学部専任講師の會澤綾子氏によれば企業不正には3つの特徴があり、その一つである社会的不正が注目されているという。會澤氏に、なぜ企業不正は止まないのかを聞いた。
2024/12/20
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方