【ワルシャワ時事】ロシアが侵攻したウクライナでの将来的な復興事業で、隣国ポーランドの重要性が増している。経済成長は欧州連合(EU)主要国を上回り、政治的な安定も期待されている。巨額の復興需要が見込まれるウクライナの最前線基地として各国企業が注目する一方で、日本勢の「出遅れ」を懸念する声も出ている。
 国際通貨基金(IMF)によると、ポーランドの2024年の実質経済成長率見通しは3.1%と、ドイツやフランスを大きく上回る。1人当たり国内総生産(GDP)は2万3000ドル(約360万円)で、04年のEU加盟から20年で3倍超に拡大。富裕層も増え、ワルシャワ市内は高級車が目に付く。
 ポーランド政府は、EUの地球温暖化対策を通じた経済構造の転換政策「欧州グリーンディール」を推進。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると「脱炭素化ビジネスが注目されている」(石賀康之ワルシャワ事務所長)といい、日本企業では、ダイキン工業が3億ユーロ(約510億円)を投じてポーランド中部に建設する省エネ暖房機器工場が7月に操業を始める。韓国の電池大手が現地生産拡大へ投資したほか、ポーランド初の原発も29年までに稼働する予定だ。
 ヤン・ハゲマイエル社会経済研究センター(CASE)マクロ経済・貿易部長は、今後のウクライナ復興に関し、「ポーランドは欧州最大の物流拠点だ」と強調。「国内には強い建設、建築材料産業がそろっている」と、インフラ整備をはじめとした復興事業の最前線基地になると話す。
 一方、復興をにらんだ対ポーランド投資では、日本企業の出遅れも指摘されている。ポーランドには自動車関連の製造業を中心に367社の日本企業が進出しているが、ワルシャワ市内には韓国や中国企業の看板が目立つ。
 EUの欧州委員会は2月、ポーランド向け補助金最大計1370億ユーロ(約23兆円)の拠出を決めた。ウクライナ復興事業も見据え、各国企業によるポーランド投資が熱を帯びる中、宮島昭夫駐ポーランド大使は「日本企業はもたもたしているうちに商機を逃してしまう」と訴える。 
〔写真説明〕韓国企業の看板が目立つワルシャワ中央駅周辺=5月26日

(ニュース提供元:時事通信社)