2024/05/05
防災・危機管理ニュース
悪質な自動車運転による死傷事故を対象とする「危険運転致死傷罪」の見直し論議が法務省の有識者検討会(座長=今井猛嘉法政大教授)で進んでいる。適切に処罰できるよう、曖昧さが指摘される現行法の成立要件を明確化する方向。超過速度やアルコール濃度の基準値を定める案が出ており、規定の仕方が焦点だ。
危険運転致死傷罪は2001年に刑法に設けられ、14年に自動車運転処罰法へ移行した。要件として「進行制御が困難な高速度」「アルコール・薬物の影響で正常な運転が困難な状態」などを規定。法定刑の上限は懲役20年で、過失運転致死傷罪(同7年)より重い。
ただ、どんな事例が該当するのか明確な基準はなく、裁判所の判断にばらつきが生じているのが現状。速度に関しては「道路状況などに照らし、ハンドルやブレーキ操作のわずかなミスで進路を逸脱するような速度」と解釈されるため、直線道路での事故に適用されない例が全国で相次いだ。
18年に津市の直線道路で時速146キロの乗用車とタクシーが衝突して5人が死傷した事故では、「衝突まで進路を逸脱したとは言えない」として危険運転致死傷罪の成立を認めなかった名古屋高裁判決が確定した。
飲酒運転のケースでは、事故前の飲酒量や運転状況、事故後の言動などが総合的に考慮されるため、立証のハードルが高いとされる。
これに対し、遺族など被害者側は「国民感情と司法判断が懸け離れている」と批判する。岸田文雄首相は昨年12月、「国民の納得が得られるものでなければならない」として法務省に見直しを指示した。
検討会は法曹関係者、大学教授、遺族団体代表ら10人で構成。法改正を視野に2月21日にスタートした。これまでの議論で「最高速度を大幅に上回る一定の数値」を要件とする案が出され、具体的には「一般道では法定速度の2倍超」などが挙がった。アルコール保有については「一定の数値以上を一律に処罰対象とする」との意見が出た。
一方で、基準速度を下回れば、危険であっても処罰できなくなるとの懸念が示された。アルコールの影響には個人差があることから「形式的に線引きできるのか」との指摘も出ており、現行の要件を残しつつ基準値を加えるといった方法が検討される見通しだ。
〔写真説明〕危険運転致死傷罪の見直しを議論する法務省有識者検討会の初会合=2月21日、東京都千代田区
(ニュース提供元:時事通信社)
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