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「Dove」などでお馴染みの世界的な消費財メーカーであるユニリーバが、最近、ESGの目標を縮小するという発表をしました。

報道によると、かつてユニリーバは2025年までに自社で使用するプラスチックを半減させるとしていた目標を2026年までに3分の1削減へと変更。その他に、2025年までに多様な企業と年間20億ユーロを取引し、同年までに従業員の5%を障害者で構成するというESG目標なども取りやめました。

グリーンピースUKのプラスチック部門責任者、ニーナ・シュランク氏は、ユニリーバの新方針を「恥ずべき」と批判。一方で、市場には、この変更を必要な戦略的調整として受け入れる動きも見られ、さまざまな反響を引き起こしています。

今回の発表が、ステークホルダーや消費者の間で大きな反響を引き起こしているのは、同社がこれまで、サステナビリティ分野において多くの成功を収めており、環境への取り組みをリードする企業として知られているためのギャップともいえます。

例えば、同社のサステナブルブランドは市場平均を上回る成長率を記録しており、企業全体の収益の50%をも占めるほどでした。また、省エネやリサイクルの取り組みにより、累計で6億ユーロのコスト削減を実現しています。しかし、今回の目標変更はESG課題よりも利益を重視せよという株主からの圧力による背景もあります。

ユニリーバのCEO、ハイン・シューマッハ氏は、世間のESG課題への関心が「周期的」であると述べており、気候変動問題から現在は世界的な紛争へと関心が移っていると述べました。

ステークホルダーへの影響と長期的な見通し

では、今回の発表による世間の評価は、ユニリーバにどのような影響を与えるのでしょうか?

ESG目標の縮小は、特に環境保護を重視する消費者と投資家に影響を与えると考えられます。また、これまで同社のサステナビリティへの取り組みを支持してきたステークホルダーは、その支持を再考する可能性があります。消費者の中には、企業の倫理的姿勢を重視する層が増えており、製品の購入決定において企業の社会的責任を重要視しています。このため、ユニリーバのブランドイメージや市場での地位に影響を及ぼす可能性があるといえます。また同社の内部に目を向けると、ESG目標の緩和が経営陣と従業員間の認識のズレを生じさせる可能性も考えられます。従業員の中には、企業の倫理的姿勢を誇りに思い、その理念に共感する者もいるため、目標の後退はモチベーションの低下を招く恐れがあります。