中国軍の動向を長年研究してきたラビ・シャンカル元インド陸軍中将が11日までに時事通信のオンラインインタビューに応じた。習近平政権は同日閉幕の全国人民代表大会(全人代)で前年比7.2%増の今年の国防予算を決めるなど、軍拡を進めている。しかし、シャンカル氏は、中国軍で不正が横行し、兵器の管理もずさんだと指摘。「中国軍は見掛けよりもはるかに弱い」との見方を示した。発言要旨は次の通り。
 ―中国は今年も国防予算が大幅増となった。
 2019年と比べると1.4倍の急増だ。米国に匹敵する軍事力の獲得を目指し、宇宙・サイバー・人工知能(AI)など最先端技術の応用に熱心な習国家主席の意向が背景にある。しかし、中国軍の兵器は粗悪だ。不正や怠慢のせいで管理がずさんだからだ。制服組トップの張又侠・中央軍事委員会副主席は昨年8月、装備の管理を抜本的に改めるよう指示した。22年8月に台湾周辺で行われた大規模演習で発射したミサイルには誤作動があったもようだ。パキスタンなどに輸出された中国製兵器もうまく作動しないことがあった。
 ―昨夏以降、多数の中国軍高官が失脚した。
 装備品調達を巡る大規模な汚職が原因だ。失脚した高官は核兵器を扱うロケット軍などの重要部署に関わり、経験が豊富だ。後任選びの基準は、能力ではなく習氏に対する忠誠心だ。中国軍は見掛けよりもはるかに弱い。新しい兵器を使いこなすには知識と経験が必要だが、有能な人材が足りない。1979年以来、中国軍は本格的な実戦を経験しておらず、人事も能力重視ではないからだ。
 ―台湾統一に意欲的な習氏が侵攻を命令する可能性は。
 台湾への上陸作戦は極めて難しい。事前の動きは衛星やドローンで察知される。ウクライナ侵攻は2年以上続いているが、ロシアは資源が多く持ちこたえている。中国は資源を輸入に頼っている。台湾侵攻が長期化すれば、中国経済への打撃は非常に大きい。経済が停滞している中、戦争を始めれば、共産党体制は崩壊するだろう。習氏が侵攻を決断することはないと思う。
 ―習氏が情勢を見誤ることはないか。
 中国軍は台湾、南シナ海、日本、朝鮮半島、インドの各地域で連鎖的に戦争が起きることを恐れている。米国と連携する形で、インドが国境地帯で軍事活動を始めれば、中国はお手上げだ。中国は公表していないが、20年にインドとの国境地帯で起きた衝突で中国側の死者はインド側よりもはるかに多かった。中国軍は戦意が乏しく、訓練も不十分だ。中国軍が近い将来に台湾に侵攻することは不可能だ。習氏も分かっているはずだ。 
〔写真説明〕ラビ・シャンカル 元インド軍中将(本人提供)

(ニュース提供元:時事通信社)