グローバリズムの終焉
第78回:ルール至上主義の弊害(7)

多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
2024/12/29
再考・日本の危機管理-いま何が課題か
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
トランプ氏が米国大統領に再選するなど、これまでの秩序に異を唱える勢力が台頭し、分断が進むことで社会が混沌とするといった論が多いように感じる。しかし、筆者はまったく異なる解釈をしている。それこそトランプ氏が圧勝した瞬間のマスメディアは凄まじいまでに危機を煽る報道や解説に埋め尽くされたことがその根拠でもある。
今年の大統領選挙の投開票前は、ハリス氏有利から接戦という報道がメディアを席巻していた。思えば、トランプ大統領が登場した初回の大統領選挙では、単なる泡まつ候補として扱われていた。隠れトランプなどの影響という言い訳はあっても、今回その前提に立った取材や調査さえすれば、少なくとも今回の選挙予測、報道に生かせないはずがない。
実際に米国内での賭けサイトの10月時点の予測はおおむねトランプ氏優位を示し、Polymarketでは勝率60%を突破している。ということは、日本のマスメディアは事実を隠し続けたという疑惑を持たれても仕方がないだろう。この原因を考察すると、マスメディアは基本姿勢としてグローバリズムの立場で希望的観測に寄り添って、不都合があれば見ないようにしている。そう感じるのは筆者だけだろうか。
これはマルクス主義が幻想と終わった東西冷戦終焉と等しく、グローバリズムの終焉を示していると、筆者は過去の投稿(2023年3月14日「様子見の姿勢ではゆでガエルへの道一直線か!?」)で論じた。この投稿における、米国戦略国際問題研究所(CSIS)で行われた当時経産大臣だった西村康稔氏のスピーチのセンテンスを下記に再掲する。
「すべての国が豊かになり、経済の相互依存を高めれば、世界は必ず平和になる」という仮説は「明らかな幻想」であった。「経済的な相互依存」は、世界を平和にするどころか、世界のリスクを高めた。
グローバリズムとは世界を同一の価値観に寄せていく基本的な理念を持つが、それこそ多様化を否定する構造をはらみ、ある意味グローバリズムが分断を生み出したのである。その結果、反グローバリズムも生まれた。
だが、その反グローバリズムは基本構造として反米のかたちであると考えるのが一般的であり、今起きているのは、それらを含めて既存の価値観を覆すものである。それゆえ抵抗も強い。前回大統領選挙における疑惑、バイデンジャンプという曰く因縁付きの現象も、その一因だと考えてよいだろう。
今回のトランプ氏再登板における人事が徐々に明らかになっているが、その内容はグローバリズムがゆえに構成されている、曰くディープステートそのものの解体的再構築を目指していると見受けられる。この影響を世界が受けないはずがなく、グローバリズムが本当に終焉を迎える日はそう遠くないだろう。
そうなれば、グローバリズムがゆえに推し進められていたさまざまな社会規範が激変していくのであり、それらを先取りする動きと既存の抵抗勢力によるせめぎ合いも激烈になるだろう。
それゆえ生じる価値観の衝突は、グローバリズムを終焉させる大きな要因である。前述した経済的交流による相互依存構造は、結局この価値観の違いを埋めることができなかったという歴史的事実を無視できない。
再考・日本の危機管理-いま何が課題かの他の記事
おすすめ記事
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/03/05
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/03/04
トヨタが変えた避難所の物資物流ラストワンマイルはこうして解消した!
能登半島地震では、発災直後から国のプッシュ型による物資支援が開始された。しかし、物資が届いても、その仕分け作業や避難所への発送作業で混乱が生じ、被災者に物資が届くまで時間を要した自治体もある。いわゆる「ラストワンマイル問題」である。こうした中、最大震度7を記録した志賀町では、トヨタ自動車の支援により、避難所への物資支援体制が一気に改善された。トヨタ自動車から現場に投入された人材はわずか5人。日頃から工場などで行っている生産活動の効率化の仕組みを取り入れたことで、物資で溢れかえっていた配送拠点が一変した。
2025/02/22
現場対応を起点に従業員の自主性促すBCP
神戸から京都まで、2府1県で主要都市を結ぶ路線バスを運行する阪急バス。阪神・淡路大震災では、兵庫県芦屋市にある芦屋浜営業所で液状化が発生し、建物や車両も被害を受けた。路面状況が悪化している中、迂回しながら神戸市と西宮市を結ぶ路線を6日後の23日から再開。鉄道網が寸断し、地上輸送を担える交通機関はバスだけだった。それから30年を経て、運転手が自立した対応ができるように努めている。
2025/02/20
能登半島地震の対応を振り返る~機能したことは何か、課題はどこにあったのか?~
地震で崩落した山の斜面(2024年1月 穴水町)能登半島地震の発生から1年、被災した自治体では、一連の災害対応の検証作業が始まっている。石川県で災害対応の中核を担った飯田重則危機管理監に、改めて発災当初の判断や組織運営の実態を振り返ってもらった。
2025/02/20
2度の大震災を乗り越えて生まれた防災文化
「ダンロップ」ブランドでタイヤ製造を手がける住友ゴム工業の本社と神戸工場は、兵庫県南部地震で経験のない揺れに襲われた。勤務中だった150人の従業員は全員無事に避難できたが、神戸工場が閉鎖に追い込まれる壊滅的な被害を受けた。30年の節目にあたる今年1月23日、同社は5年ぶりに阪神・淡路大震災の関連社内イベントを開催。次世代に経験と教訓を伝えた。
2025/02/19
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方