グローバリズムが終焉に向かっている(イメージ:写真AC)

トランプ氏再選の構造的背景

トランプ氏が米国大統領に再選するなど、これまでの秩序に異を唱える勢力が台頭し、分断が進むことで社会が混沌とするといった論が多いように感じる。しかし、筆者はまったく異なる解釈をしている。それこそトランプ氏が圧勝した瞬間のマスメディアは凄まじいまでに危機を煽る報道や解説に埋め尽くされたことがその根拠でもある。

グローバリズムが社会の分断を生み出し、その分断がトランプ氏を生み出した(イメージ:写真AC)

今年の大統領選挙の投開票前は、ハリス氏有利から接戦という報道がメディアを席巻していた。思えば、トランプ大統領が登場した初回の大統領選挙では、単なる泡まつ候補として扱われていた。隠れトランプなどの影響という言い訳はあっても、今回その前提に立った取材や調査さえすれば、少なくとも今回の選挙予測、報道に生かせないはずがない。

実際に米国内での賭けサイトの10月時点の予測はおおむねトランプ氏優位を示し、Polymarketでは勝率60%を突破している。ということは、日本のマスメディアは事実を隠し続けたという疑惑を持たれても仕方がないだろう。この原因を考察すると、マスメディアは基本姿勢としてグローバリズムの立場で希望的観測に寄り添って、不都合があれば見ないようにしている。そう感じるのは筆者だけだろうか。

これはマルクス主義が幻想と終わった東西冷戦終焉と等しく、グローバリズムの終焉を示していると、筆者は過去の投稿(2023年3月14日「様子見の姿勢ではゆでガエルへの道一直線か!?」)で論じた。この投稿における、米国戦略国際問題研究所(CSIS)で行われた当時経産大臣だった西村康稔氏のスピーチのセンテンスを下記に再掲する。

「すべての国が豊かになり、経済の相互依存を高めれば、世界は必ず平和になる」という仮説は「明らかな幻想」であった。「経済的な相互依存」は、世界を平和にするどころか、世界のリスクを高めた。

グローバリズムとは世界を同一の価値観に寄せていく基本的な理念を持つが、それこそ多様化を否定する構造をはらみ、ある意味グローバリズムが分断を生み出したのである。その結果、反グローバリズムも生まれた。

価値観の衝突がグローバリズムを解体していく(イメージ:写真AC)

だが、その反グローバリズムは基本構造として反米のかたちであると考えるのが一般的であり、今起きているのは、それらを含めて既存の価値観を覆すものである。それゆえ抵抗も強い。前回大統領選挙における疑惑、バイデンジャンプという曰く因縁付きの現象も、その一因だと考えてよいだろう。

今回のトランプ氏再登板における人事が徐々に明らかになっているが、その内容はグローバリズムがゆえに構成されている、曰くディープステートそのものの解体的再構築を目指していると見受けられる。この影響を世界が受けないはずがなく、グローバリズムが本当に終焉を迎える日はそう遠くないだろう。

そうなれば、グローバリズムがゆえに推し進められていたさまざまな社会規範が激変していくのであり、それらを先取りする動きと既存の抵抗勢力によるせめぎ合いも激烈になるだろう。

それゆえ生じる価値観の衝突は、グローバリズムを終焉させる大きな要因である。前述した経済的交流による相互依存構造は、結局この価値観の違いを埋めることができなかったという歴史的事実を無視できない。