米大統領選で民主、共和両党が競り合う「スイング・ステート(揺れる州)」の南部ノースカロライナ州。民主党のバイデン大統領、共和党のトランプ前大統領による再戦の構図が固まる中、同州ではトランプ氏が世論調査でリードしている。再選に向けバイデン氏が進めてきた経済政策の恩恵は、今のところ追い風になっていない。
 ◇大型投資で活況
 「経済が特に重要だ。生活費の高騰が気がかりで、大学卒業後にアパートを探そうとしても、家賃のことを考えてしまう」。州内の大学に通うアナリーズ・リンケンホーカーさん(21)は、大統領選では経済政策を重視すると話す。
 経済は年齢層に関係なく、同州で最大の争点だ。独立系の地元紙を発行するシンクタンク「ジョン・ロック財団」のブライソン最高経営責任者(CEO)は、「2005年以来、世論調査では常に経済・雇用が関心事の第1位だ」と指摘する。
 バイデン政権が発足した21年以降、ノースカロライナでは外国企業による大型投資が相次いでいる。昨年10月末にはトヨタ自動車が建設中の車載用電池工場に約80億ドル(約1兆2000億円)を追加投資し、さらに3000人を雇用すると発表した。
 バイデン政権は巨額の補助金で電気自動車(EV)の国内生産を促すインフレ抑制法などを成立させ、脱炭素化を推進。クーパー知事(民主党)は「今後数十年間、われわれの家族と地域社会を支える高賃金の雇用をもたらす」と、トヨタの投資を歓迎する。
 人口1100万人弱のノースカロライナでは、外国企業だけで30万人以上を雇用している。連邦政府の経済政策に州独自の税制優遇なども相まって、同州のGDP(域内総生産)の成長率は21、22両年、全米平均を大きく上回った。失業率も全米平均を下回る水準で推移している。
 ◇勝ち組と負け組
 しかし、好況に沸く同州の世論調査で、バイデン氏は苦戦を強いられている。イーストカロライナ大の2月の調査によると、支持率はトランプ氏の47%に対し、バイデン氏は44%と劣勢だった。
 地元デューク大のアッシャー・ヒルデブランド准教授(公共政策)は「州内にはテクノロジーやバイオなど勝ち組産業もあれば、繊維・家具など負け組産業もある。経済繁栄を享受できない人々が混在している」と分析。「有権者は今でも、経済ではトランプ氏の政策を好んでいる」と強調する。
 16年と20年の大統領選では、トランプ氏がノースカロライナを制したが、20年はバイデン氏との差がわずか約1.3ポイントの大接戦だった。それから4年。職を求めて州外からの人口流入が加速し、その多くは民主党支持層に重なる。共和党陣営は「差はさらに縮まるだろう」(バーグストロム同州ウェイク郡地区会長)と警戒を強めるが、バイデン氏も支持拡大に苦闘している。 
〔写真説明〕米南部ノースカロライナ州ローリーで開かれた集会で、演説するバイデン大統領=1月18日(AFP時事)
〔写真説明〕米南部ノースカロライナ州の大学生アナリーズ・リンケンホーカーさん=4日、ノースカロライナ州ダーラム

(ニュース提供元:時事通信社)