2024/03/07
防災・危機管理ニュース
イスラム教において最も神聖な期間「ラマダン(断食月)」が、10日ごろに始まる。昨年10月以降、パレスチナ自治区ガザで続くイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘を巡り、米国やカタールなど仲介国はラマダン前に休戦交渉を成立させようと急いでいる。
ラマダンは太陰暦に基づき約1カ月続く。イスラム教徒は日中の飲食を断ち、日没後、家族や親族らと共にごちそうを食べて団らんを楽しむ。テレビでは特別ドラマが放送され、イスラム圏では街中がお祭り一色となる。
東京外国語大の八木久美子教授(宗教学)は「イスラム教徒にとって一年で最も楽しみにしている期間であり、より良い生き方をしようという思いが、いつも以上に高まる」と説明。「紛争のような暴力的なことはしたくないという考えも当然強まる」として、「『クリスマス休戦』のように、ラマダンは停戦の機会となり得る」と指摘する。
逆にラマダン中に、イスラエルによる攻撃が続けば、アラブ諸国を中心にイスラム教徒が猛反発することは必至だ。日本の外務省は、パレスチナ情勢の緊迫化も踏まえ「テロの脅威が高まる傾向にある」と海外渡航について注意喚起している。イエメンやレバノンといった周辺国の親イラン武装組織が、イスラエルへの攻撃をエスカレートさせる恐れもある。
また、ガザ住民は既に深刻な人道危機に陥っており、断食に臨んでみんなでお祝いする状況ではない。八木教授は「ガザの人々は、ラマダンという『特別な時間を奪われた』と感じるだろう」とも説明する。
昨年のラマダン期間中には、エルサレム旧市街のイスラム教聖地ハラム・アッシャリフ(ユダヤ教呼称「神殿の丘」)でパレスチナ人とイスラエル治安部隊の武力衝突が発生した。今年も聖地周辺での治安悪化を警戒するイスラエルは、状況次第で立ち入りを禁止する方針を示している。
〔写真説明〕パレスチナ自治区ガザ中部デイルバラで、ラマダン(断食月)の準備をする市民=3日(AFP時事)
(ニュース提供元:時事通信社)
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方