2024/02/27
防災・危機管理ニュース
政府は27日、経済安全保障上の重要な情報を扱う資格者を政府が認定する「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」の制度創設に向けた法案を国会に提出した。制度を整備することで海外との共同研究に参加しやすくなり、企業のビジネスチャンス拡大が期待される。一方、身辺調査を含むため、調査対象者が不利益を被らないかとの懸念もある。
適性評価は、安全保障上重要な情報にアクセスする必要がある政府職員や民間人の適格性を確認し、資格を与える制度だ。日本では、2014年施行の特定秘密保護法で、防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野を対象に導入された。約13万人の資格保有者のうち、9割以上を公務員が占める。
だが、人工知能(AI)など軍事と民生の両方に利用できる「デュアルユース」と呼ばれる技術の領域が拡大し、情報保全の必要性が国際的に高まった。
日本は先進7カ国(G7)の中で唯一、経済安保が対象の情報を扱う資格者を政府が認定する制度が未整備で、技術者などが国際的な会議に参加できないケースも生じていた。産業界は「AIや量子といった次世代技術の共同開発に携わる機会を拡充したい」(企業関係者)として導入を要望していた。
政府が保有し、漏えいすると安全保障に支障がある情報が保全対象に指定される。有効期限は5年以内だが、原則として30年まで延長可能。「サイバー脅威」への防御策や半導体といった重要物資のサプライチェーン(供給網)に関する情報が想定されているが、経団連は2月、指定する情報の範囲について、「特に国家として厳格に保全すべき情報に限定」するよう求めた。
一方、資格の付与に当たっては、飲酒の節度や精神疾患、家族の国籍など7項目を調査する予定だ。政府は「本人の同意を得た上で実施」とするが、日本弁護士連合会は「拒めば、人事考課や給与査定などで不利益を受ける可能性も否定できない」と危惧する。
高市早苗経済安保担当相は27日の閣議後記者会見で、「適性評価の結果や内容は大切な個人情報で、企業側には伝わらない」と説明したが、国民や事業者の疑念払拭に向け、国会審議での丁寧な議論が求められる。
(ニュース提供元:時事通信社)
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