2024/02/21
令和6年能登半島地震

電気設備を製造・販売するパナソニックエレクトリックワークス社(大阪府門真市、大瀧清社長)は、発災時にも製品の製造を止めないサプライチェーンリスクマネジメントに取り組んでいる。重要な製品や部品を整理し、メーカーや製造拠点の詳細な情報まで把握。代替情報を加え、動き出しのスピードアップを実現した。元日に発生した能登半島地震でも素早く対応し、製品製造に大きな影響はなかった。
❶サプライチェーンの情報を全社的に一括管理
・製品や部品のデータベースを構築し、発災時に影響を受ける製品や部品を素早く把握する。
❷発災時に必要な情報を、迅速に抽出できる環境を整える
・優先すべき製品を決めることでデータベース内の登録データを減らし、一般的なパソコンで利用できるシステムにする。
❸部品の供給停止を視野に入れ、代替手段の情報までを登録
・代替手段の確保で対策を先行できる。
未曾有の供給停止
照明や配線器具など、パナソニックの原点である電気設備を製造・販売するパナソニックエレクトリックワークス社(パナソニックEW社)。同社調達センター所長でサプライチェーン戦略部部長を兼任する森下賢治氏は「パナソニックEW社は生活に密着して欠かすことのできない製品を生産し、社会インフラとしての役割を担っています。生産停止に直結するサプライチェーンの途切れを生じさせていけない」と話す。
同社が各生産拠点に委ねていたサプライチェーンマネジメント(SCM)を一新し、全社的に取り組むきっかけになったのは、2020年に起きたサプライヤーの火災事故。中枢部品の供給が停止し、製品製造に大きな打撃を受けた。森下氏は「調達史上、未曾有の大事故だった」と語る。
そこで、当時のエナジーシステム事業部(現:電材&くらしエネルギー事業部)でSCM体制の確立が急務となり、2021年、事業部内にリスクマネジメント推進室を立ち上げた。
着手したのは、各生産拠点が発注している部品などのデータベース整理。推進室を設置する前の準備段階から取り組んだ。部品の発注先である商社だけでなく、部品メーカーとその製造拠点の住所までも登録。理由は、発災時にどのメーカーのどの拠点で、どの部品の生産が止まり、どの自社製品が影響を受けるかを素早く突き止め、対策に動き出すためだ。
データベースの整理を進め、活用するシステムまでを構築。推進室の発足2カ月後には運用を開始した。2021年末にはライティング事業部などを含めたパナソニックEW社の全社的なプロジェクトに発展し、データの拡充を進めた。
昨年4月にはプロジェクトの推進と並行して、サプライチェーンリスクマネジメント(SCRM)の専任部署を、各事業部の調達部門が集まる調達センター内に新設。サプライチェーン戦略部リスクマネジメント推進課がスタートした。
事例から学ぶの他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/03/04
-
-
-
トヨタが変えた避難所の物資物流ラストワンマイルはこうして解消した!
能登半島地震では、発災直後から国のプッシュ型による物資支援が開始された。しかし、物資が届いても、その仕分け作業や避難所への発送作業で混乱が生じ、被災者に物資が届くまで時間を要した自治体もある。いわゆる「ラストワンマイル問題」である。こうした中、最大震度7を記録した志賀町では、トヨタ自動車の支援により、避難所への物資支援体制が一気に改善された。トヨタ自動車から現場に投入された人材はわずか5人。日頃から工場などで行っている生産活動の効率化の仕組みを取り入れたことで、物資で溢れかえっていた配送拠点が一変した。
2025/02/22
-
-
現場対応を起点に従業員の自主性促すBCP
神戸から京都まで、2府1県で主要都市を結ぶ路線バスを運行する阪急バス。阪神・淡路大震災では、兵庫県芦屋市にある芦屋浜営業所で液状化が発生し、建物や車両も被害を受けた。路面状況が悪化している中、迂回しながら神戸市と西宮市を結ぶ路線を6日後の23日から再開。鉄道網が寸断し、地上輸送を担える交通機関はバスだけだった。それから30年を経て、運転手が自立した対応ができるように努めている。
2025/02/20
-
能登半島地震の対応を振り返る~機能したことは何か、課題はどこにあったのか?~
地震で崩落した山の斜面(2024年1月 穴水町)能登半島地震の発生から1年、被災した自治体では、一連の災害対応の検証作業が始まっている。石川県で災害対応の中核を担った飯田重則危機管理監に、改めて発災当初の判断や組織運営の実態を振り返ってもらった。
2025/02/20
-
-
2度の大震災を乗り越えて生まれた防災文化
「ダンロップ」ブランドでタイヤ製造を手がける住友ゴム工業の本社と神戸工場は、兵庫県南部地震で経験のない揺れに襲われた。勤務中だった150人の従業員は全員無事に避難できたが、神戸工場が閉鎖に追い込まれる壊滅的な被害を受けた。30年の節目にあたる今年1月23日、同社は5年ぶりに阪神・淡路大震災の関連社内イベントを開催。次世代に経験と教訓を伝えた。
2025/02/19
-
阪神・淡路大震災30年「いま」に寄り添う <西宮市>
西宮震災記念碑公園では、犠牲者追悼之碑を前に手を合わせる人たちが続いていた。ときおり吹き付ける風と小雨の合間に青空が顔をのぞかせる寒空であっても、名前の刻まれた銘板を訪ねる人は、途切れることはなかった。
2025/02/19
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方