リスクマネジメント最前線より

2013年4月13日淡路島付近の地震について
~この地震の発生から、何を学ぶか?~

2013年4月13日早朝に、淡路島付近を震源とする地震が発生し、最大で震度6弱が観測された。揺れによる被害は甚大でなかったものの、震源周辺の淡路島洲本市などで、4,000棟以上の建物被害が発生した。東日本大震災以降、南海トラフや首都直下地震など、近い将来に発生が想定される地震の対策が強く推進されている状況下で、そのような大地震への意識が高くなっていたものの、本地震の発生は想定していなかった。日本のどの地域であっても地震対策を怠ることはできないことを、本地震は再認識させたといえよう。本稿では、この地震の発生メカニズムや被害について纏めるとともに、この地震を教訓に今後の大地震発生に備えて考えるべきことについて解説する。

1.地震について


(1)地震概要
2013年4月13日午前5時33分、淡路島付近を震源とするM6.3の地震が発生した。淡路島内は、淡路市で震度6弱、南あわじ市で震度5強、洲本市で震度5弱となるなど、大きな揺れとなった。淡路島周辺の瀬戸内海沿岸や大阪湾沿岸では震度4、本州・四国の内陸部では震度3の揺れが観測された。

(2)地震発生のメカニズム
本地震は、淡路島の内陸で発生した内陸活断層型地震である。淡路島には、六甲・淡路断層帯や先山(せんざん)断層帯など、多くの断層が存在し、1995年に発生した兵庫県南部地震は六甲・淡路断層帯に属する野島断層が活動したものであった。今回の地震について、地震調査研究推進本部は、「逆断層型で、地殻内の地震である。今回の地震の余震分布と本震の発震機構から推定される震源断層は南北方向に延びる西傾斜の逆断層であった。この地震は、「平成7年(1995年)兵庫県南部地震」の余震域の「この震源域南部に近接して六甲・淡路南西端に近接する領域で発生した。」と報告している(1)。また、島断層帯の一部である先山断層帯が存在している。地震調査委員会は、この先山断層帯について、全体が活動するとM6.6程度の地震が発生する可能性があると評価していたが、今回の地震とこの断層帯との関係については不明である。」としている。今回の震源断層は、事前に認識されていなかった断層が活動したものという見解であり、今後の詳細な調査が待たれる。また、南海トラフとの関連については、「3.この地震の教訓について」にて後述する。

(3)緊急地震速報
本地震では、西日本に対して、初めて緊急地震速報が配信された。緊急地震速報は、地震発生直後に震源周辺で観測された地震動のデータを分析して即時に震源の位置や地震規模を特定し、各地での大きな揺れ(主要動)の到達時間や震度を推計して配信するシステムである。なお、緊急地震速報は、気象庁の発表する「一般向け」の緊急地震速報と、特別な機器やソフトウェアを備えた利用者に対して配信する「高度利用者向け」の二種類がある。高度利用者向けの配信では、配信するべき地震の基準が低く設定されており、場合によっては誤報を含む場合があるが、即時性が高い。一方、「一般向け」の緊急地震速報は、一定の信頼性を確保した情報を配信するため、即時性に見劣りがする。また、このような情報の配信は、主要動の発生前に届けることが期待されているが、内陸活断層による直下型地震では震源周辺に速報が間に合わないという課題がある。

今回の「一般向け」の緊急地震速報(警報)は、地震波検知の7.5秒後に配信されたため、震源である淡路島や大阪湾沿岸の地域で、主要動の到達に間に合わなかった。大阪の内陸、京都といったより遠方の地域については、主要動により大きな揺れとなる前に、速報(警報)が届き、情報利用者の身構えに貢献したと考えられる。しかし、そのように速報が間に合った地域の震度はより小さく、速報が安全性に大きく貢献できるのは、今回、速報の間に合わなかった震源に近く、より揺れの強い地域である。

一方、「高度利用者向け」の緊急地震速報(予報)は、「一般向け」より4秒ほど早く(地震波検知の3.5秒後)配信されている。そのため、淡路島島内では主要動の到達に間に合わなかったものの、大阪湾沿岸(神戸市、大阪市此花区、大阪市住之江区など)や、それより遠い地域では間に合っている。今回、「高度利用者向け」は、大阪湾沿岸地域の震度4程度の揺れの地域まで対応できたと考えられる。

「一般向け」の緊急地震速報は、テレビ、ラジオ、携帯電話などでも配信されることから、多くの人が利用可能で、まさに一般的になってきた。しかしながら、「高度利用者向け」は、特別な機器・ソフトウェアや専用回線が必要であることから、まだ普及が進んでいない。本地震での事例のように、「高度利用者向け」の速報は「一般向け」と比較して、近傍で発生した地震に対して、数秒多く時間を確保できるものである。この数秒が生命の安全を確保するのに有効に働く場合もあり、今後、積極的な導入が進むことを期待したい。

2.被害について


(1)被害概要
今回の地震による被害は住家全壊3棟、半壊27棟、一部破損4,116棟、人的被害は死者0名、負傷者33名であった。今回の地震は最大震度6弱であるものの、地震規模はM6.3と比較的小さい。また、強い揺れの地域は山地部分が多いこともあり、震源周辺で4,000棟以上の住家被害が発生しているものの、そのほとんどが瓦屋根の被害であった。そのため、建物倒壊などに伴う死者は発生しなかった。この内、多くの被害は洲本市に集中し、淡路島洲本市の住家の被害棟数は約2,800棟にも及んでいる。なお、平成20年住宅土地統計によれば、洲本市の住家棟数は約17,800棟である。今回の地震により市内の約16%の建物が何らかの被害を受けていることがわかる。一方、淡路島の対岸、紀伊半島西側の建物でも、建物の付帯設備の被害等が発生しており、中長周期地震動による被害といったものも一部確認されている。

(2)淡路島の地震被害
弊社は、今回の地震に際し、発生から3日後の2013年4月16日に現地調査を実施し、被害状況の確認を行った。調査については淡路島に主眼を置き、被害の集中した洲本市周辺を中心に、埋立地周辺の液状化の状況や淡路島において積極的な誘致が行われているメガソーラー施設について実施した。

淡路島はそのほとんどが丘陵~山地から構成されている。平地部分は海岸線のごく一部や、洲本川河口部である洲本市街地周辺、松帆志知川河口部であり、平地部分が極めて少ない地形を有している。山地部分については一般的に地盤状況が比較的良好であり、今回の地震についても平地部分や埋立地での被害がほとんどで、山地部での被害は墓石や土壁の崩壊が一部見られるものの、限定的なものとなっている。地震被害の内容としては、海岸線付近では一部液状化により砂、泥の噴出が発生しており、歩道上舗装面の大部分が砂や泥で覆われた被害(写真1)や、埋立地護岸面において若干の側方流動による護岸のずれが見受けられた(写真2)。

洲本市付近では民家の瓦の落下、外壁の脱落、墓石の滑動や崩落、土壁の崩壊、店舗内天井、防煙垂壁の破損や落下、地割れ等が多数散見された。ただし、日常生活自体に大きな支障は見られず、地震後3日目ということもあり、通常の日常生活が開始されているように見受けられた。震央位置は五色町から約2kmであるが、目立つ被害としては洲本市周辺(震央から約11km)に集中している。これは表層地盤が洲本市街地において洲本川の堆積物による扇状地となっていることから地震動の増幅が大きく、またその平地の広さから人口も集中しているため、被害が多くなったものと推察される。

(3)メガソーラー発電所の被害
淡路島を有する兵庫県では、平成23年8月に成立した「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」に基づき、県内におけるメガソーラー発電所(以下、メガソーラーと記す)の候補地を積極的に紹介、誘致することで太陽光発電ビジネスの拡大を図っている。

メガソーラーは広大な敷地を要することから、淡路島においては、平地に建設する場合は主に埋立地にて敷地を確保している。その他は、南側に面した山地中腹部を利用した立地となっている。メガソーラー発電所は、近年の再生エネルギー利用促進の政策により急速に増加したため、発電所自体が地震による大きな揺れを経験するのは今回が初めてであった。山地の発電所については、先に述べたように地盤が良好であるため、本地震による被害はほぼ皆無と見受けられた。一方、埋立地に建設されたものは、施設の被害はないものの、設置地盤に一部液状化の痕跡が見られた。但し、目視調査では地盤に目立った不陸(表面が凸凹であること)、沈下は見受けられなかった。

今回の地震で大きな被害は見受けられなかったように、太陽光パネルを支持する鉄骨架台は設計外力として風荷重が支配的であり、地震動による架台そのものの被害発生の可能性は限定的と考えられる。一方、地盤の地震リスクの検討としては、敷地が広大であるために、地震時液状化対策を実施しないケースも散見される。立地選定時には、適切な方法で液状化リスクの把握を行い、液状化発生が懸念される場合には、液状化発生時の不同沈下に対して角度・高さ調整が可能な架台を採用することが望ましい。


3.この地震の教訓 ~将来の大地震に向けて考えるべきこと~


(1)内陸活断層による直下型地震の被害
日本周辺においては、プレートの沈み込みに伴う海溝型地震と、内陸活断層型地震が発生することが知られている。海溝型地震は再来期間が数百年程度であるが、内陸活断層地震の再来期間は、数千年~数万年と比較的長いため、切迫度の観点から、海溝型地震に注目しがちである。しかしながら、このような内陸活断層地震が一度発生すると、震源が地表面に近いことから、震源の近傍で極めて大きな地震動が発生し、建物・住民に甚大な被害を与える。また、断層の上に建物がある場合には、断層のずれによる大被害が発生する可能性もある。

日本列島は内陸に活断層が多く存在しており、都市部においても大きな活断層が認識されている。都市部で発生した内陸活断層型の地震としては、兵庫県南部地震が代表として挙げられる。この地震は都市部の直下で発生したものであり、約6,400人もの死者、及び約43,800人もの負傷者を出した。また、建物の全壊被害は約10万棟以上にも達している。東北地方太平洋沖地震では、死者・行方不明者が約21,000人、負傷者は約6,200人、建物の全壊被害は約12,900棟であったが、この大部分は津波による被害である。揺れによる被害としては、近年の被害地震の中で、兵庫県南部地震が突出していることがわかる。都市部の内陸直下型地震の災害が非常に甚大になることが見て取れよう。

今回の地震を見ると、震源は淡路島のほぼ中心に位置し、強い揺れに見舞われた地域の人口や建物の棟数が比較的少なかったため、被害が少なかったといえる。同規模の地震であっても、都市の中心部で発生した場合には、甚大な被害が予想され、例え小さな規模の地震であっても、対策を怠ることはできない。

そのような観点で、今後、大阪平野の上町断層帯(M7.5程度)、関東平野の立川断層帯(M7.4程度)などの都市部の活断層に、特に注意することが必要である。これらの活断層での地震発生確率(今後30年間)は、上町断層帯:2~3%、立川断層帯:0.5~2%と決して低くはない。特に立川断層帯は、東北地方太平洋沖地震の発生で日本列島が地殻変動したため、発生確率が高くなっている可能性も指摘(6)されており、対策の必要性は極めて高いと考えられる。

なお、周辺に内陸の活断層が認められていないからといって、安心してはならない。前述のように今回の地震を引き起こしたのは未知の断層であった可能性が高い。現在、地震調査研究推進本部においても、近年、未知の活断層による地震が相次いで発生していることから、「新たな活断層調査」の方針を打ち出し、活断層の詳細位置図に各種調査及び評価結果を記した『活断層基本図(仮称)』の作成に取り掛かっている。しかし、いまのところ、内陸の活断層については情報が不十分である。よって、本地震を引き起こしたような未知の断層が、まだ日本に多くあることを強く認識し、どの地域であっても、周辺に活断層があるというつもりで対策を検討することが必要である。

(2)長周期地震動
通常、震源から出る地震動(揺れ)には、ガタガタといった短い周期の成分からユラユラと揺れる長い周期の成分まで、様々な周期の成分が含まれている。特に、海溝型の巨大地震のように震源域が広い地震は、長周期成分を豊富に含む地震動が放出される。一方、堆積盆地の平野部(地下深くが、盆地構造になっており、柔らかい地盤が堆積している平野)は、振動する場合の固有周期が長い。よって、このような平野部に長い周期成分の地震動が到達すると、共振し、揺れが増幅されることとなる。また、このような平野部に立地する高層ビルなどの長い固有周期をもつ構造物も、共振現象により、長時間、大きく揺れ、被害が発生することが懸念されている。

実際、2003年十勝沖地震では、苫小牧市内の石油タンクが長周期地震動によるスロッシング(容器の液体の表面が、長い周期の振動により揺動すること)で火災が発生している。また、2004年新潟中越沖地震や2011年東北地方太平洋沖地震では、長周期地震動により、首都圏の高層ビルのエレベーターが故障するなどの被害が頻発した。高層ビルが大きく揺れる姿も、多く報道されており、目にされた方も多いであろう。

このような地震動の長周期成分は、減衰しにくく、震源から遠い場合でも、揺れが大きくなることがある。また、地震動が伝播する経路上で長周期成分が増幅されることもある。実際、東北地方太平洋沖地震では、震源から750km以上離れた大阪府咲洲庁舎(55階建:高さ256m)が、長周期地震動による共振現象により、建物の52階では2.5m以上の大きな揺れが発生し、上層階ではスプリンクラーの破損による水濡れや、天井ボードの一部が落下するなどの大きな被害になった(8)。この結果、大阪府は府庁舎を咲洲庁舎に移転する計画を断念する事態に追い込まれた。なお、現在、この咲洲庁舎では長周期地震動対策工事が行われている。

今回の地震でも、この長周期地震動が、気象庁により観測されている。気象庁では、2013年3月末より、長周期地震動による観測情報(試行)を、長周期地震動階級(表2)としてホームページにて公開している(9)。今回の地震は、この情報の公開以降、最も大きな長周期地震動階級となり、兵庫県淡路島では長周期地震動階級2、大阪府南部・兵庫県南東部・徳島県北部では長周期地震動階級1が観測された。階級2は、「高層ビルにおいて物につかまらないと歩くことが難しいほどの大きな揺れ」と解説されており、内陸の活断層地震であったにもかかわらず、今回の地震による長周期地震動が大きかったことが想像できる。なお、参考までに、東北地方太平洋沖地震における長周期地震動階級は、東京23区で階級4、大阪府北部・南部で階級2となっており、大阪では今回の地震より大きい長周期地震動であった。

今回の地震で、防災科学技術研究所が観測した記録(10)の加速度応答スペクトルについて、東北地方太平洋沖地震と比較して図5に示す。約1.4秒以降の長周期成分では、震源に近い淡路島(K-NET 五色)より、震源から遠い大阪平野(KiK-net 此花)の方が、加速度応答が大きい。つまり、1.4秒より長い固有周期をもつ建物として、例えば、13階建以上のマンションが、両方の地に立っていた場合には、大阪平野にあるマンションの方が大きく揺れることを示している。震源から遠いからといって安心できないのがこの現象である。

将来発生が予想されている南海トラフの巨大地震では、震度階級4の長周期地震動の発生も懸念され、超高層オフィスビル、あるいは、高層マンションなどにおける長周期地震動への備えが急がれる。

(3)南海トラフ地震との関係
南海トラフは、静岡から四国の太平洋沿岸に位置する海底の深い溝で、フィリピン海プレートが陸域のユーラシアプレートに沈み込んでいる地帯である。この沈み込みに伴い、過去にM8クラスの東南海地震・南海地震が約100~200年おきに発生している。過去にはこれらの地震が連動して発生し、より大きな地震規模となったことがあるが、その発生メカニズムについては、不明な部分が多い。現在、内閣府は、この南海トラフで発生する最大クラスの地震について被害想定を実施し、対策を検討中である。この地震が大きく取りざたされるのは、日本周辺で発生する最大規模の地震であり、関東から九州まで広域にわたって大災害が発生することが懸念されるためである。また、現時点における今後30年間における地震発生確率も、東南海地震は70~80%、南海地震は60%程度と、非常に高い。

今回の地震発生直後には、南海トラフで発生する地震の震源域と今回の地震の震源が近いことから、南海トラフの地震との関係が注目された報道が目立った。多くの有識者がこの関係にコメントを寄せているものの、本地震が南海トラフの地震の前兆といったような、直接的な関係を指摘する声はない。しかしながら、南海トラフで大地震が発生する前後は、西日本の内陸で活断層による地震が頻発することが指摘されており、今後も、引き続き、そのような内陸の活断層による地震が発生するとの懸念が報じられている。図6にこの関係を示すが、南海トラフで発生する前後では、内陸の活断層において地震が頻発していることがわかる。最も新しい地震の発生は、1944年東南海地震、1946年南海地震であるが、それ以降、西日本では活断層での地震が静穏化した。そして、約50年を過ぎて発生した1995年兵庫県南部地震以降、2000年鳥取県西部地震、2001年芸予地震、今回の淡路島周辺の地震と、この数年でたてつづけに内陸活断層の地震が頻発した。今後も西日本では、内陸活断層の地震が発生する傾向が続き、近い将来に南海トラフ周辺で大地震となる可能性が高い。その後も、南海トラフの地震の地殻変動に伴う誘発地震が内陸においても頻発し、やがて活動が静穏化していくと考えられる。

4.教訓


東日本大震災以降、政府・地方自治体・企業・個人など様々な主体で地震リスクへの対策が進められてきた。特に、政府内閣府は、南海トラフで発生する巨大地震や首都直下地震など、発生確率が高く、日本全体にとって、大きな災害となりえるシナリオを優先して、対策の検討を進めてきた。そのため、今回の地震のような比較的規模は小さいものの震源周辺の地域にとって大きな被害を及ぼすような地震についても対策の重要性を再認識する必要がある。本地震から我々が得た教訓を以下にまとめる。これらの事項を地震対策に活かして、防災・減災を強く推進することが急務と考える。

■直下型の内陸活断層地震への備え
南海トラフで発生する巨大地震や相模トラフ周辺の地震など、海溝型地震は再現期間が短く、また規模も大きい。現在、これらの地震の発生確率が高いことが、政府地震調査研究推進本部からも示されており、また、内閣府が対策を検討していることからも、これらの地震対策に注意が行きがちである。もちろん、このような地震対策は必要であるものの、内陸直下型地震の発生について、特に活断層の近傍では対策を怠ってはならない。

■都市部における内陸活断層地震への備え
そのような地震は、海溝型地震に比較して発生確率は低いものの、一度起これば、震源近傍で大きな揺れが発生し、甚大な被害をもたらす。日本列島はどの地域も活断層が存在しており、どの地域であっても内陸活断層による地震の可能性を対策において考えるべきである。特に、大阪平野の上町断層帯や関東平野の立川断層帯、神縄-国府津・松田断層帯などは、活断層の中でも比較的発生確率が高く、人口の多い都市部に位置する活断層であるため、一度地震が起これば大被害となり、より一層の注意が必要である。

■恒常的な地震防災の意識
一度、その地域で大地震が発生したからと言って安心してはならない。地震発生により、余震や誘発地震が発生するリスクが高まる場合もある。また、十数年たっていたとしても、今回の地震のように、以前の大地震の震源周辺で大きな地震が発生することがある。地震が発生していないからといって、気を緩めてはならない。

■長周期地震動への備え
長周期地震動は、主に平野部の大規模構造物(超高層オフィスビルあるいは高層マンションなど)にとって大きなリスクである。特に、発生確率が高いとされている南海トラフの地震では、大阪平野、濃尾平野、関東平野などで大きな長周期地震動が発生する。構造的な被害がない場合でも、建物の特に上部では、大きな揺れが長時間発生し、家具・什器・設備が、転倒・移動するなどして、大きな被害となる可能性がある。

本稿が、防災・減災活動の取組の一つの動機づけになれば、幸いである。

  〔2013年4月19日発行〕
  〔2013年4月23日被害状況を修正〕

【参照文献】
1 地震調査研究推進本部:2013年4月13日淡路島付近の地震の評価, 2013/4/14
2 地震調査研究推進本部:六甲・淡路断層帯の長期評価, 2005/1/12
3 総務省消防庁:災害情報より
4 総務省消防庁:淡路島付近を震源とする地震(第19報), 2013/4/22
5 防災科学技術研究所:J-SHIS地震ハザードステーション, URL://http://www.j-shis.bosai.go.jp/
6 地震調査研究推進本部:東北地方太平洋沖地震後の活断層の長期評価について, 2011/9/30
7 地震調査研究推進本部:上町断層帯の長期評価, 2004/3/10
8 気象庁:長周期地震動に関する情報のあり方検討会(第1回)資料「東北地方太平洋沖地震時における長周期地震動による揺れの実態調査について」, 2011/11/14
9 気象庁:長周期地震動に関する観測情報(試行)について, URL://http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/ltpgm_explain/kaisetsu.html
10 防災科学技術研究所:強震観測網(K-NET,KiK-net), URL://http://www.kyoshin.bosai.go.jp/kyoshin/
11 気象庁:長周期地震動階級および長周期地震動階級関連解説表について,
URL://http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/ltpgm_explain/about_level.html


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転載元:東京海上日動リスクコンサルティング株式会社 リスクマネジメント最前線2013 No.18
東京海上日動リスクコンサルティング株式会社