2013/03/05
防災・危機管理ニュース
震災発生当時と比べた追跡では約1.5倍に増加
NTTデータ経営研究所が実施した「東日本大震災発生後の企業の事業継続に係る意識調査(追跡調査)」によると、東日本大震災後2年となる現在、BCP策定済み企業は約4割になり、震災発生当時と比べ約1.5倍に増加した。その一方で、BCPを策定済みの企業と策定中(検討中含む)の企業の半数超が現状の策定内容(あるいは検討内容)は不十分と認識しているという。また地域別のBCP策定状況において「東高西低」が進み、中部以西に位置する企業のBCP策定割合は、関東の企業の半数前後と、今後発生が予想される南海トラフ地震の対策として不安な状況が見えた。
調査はNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが提供する「gooリサーチ」に登録しているビジネスモニターを対象に行ったもので、調査期間は2012年12月21日‐2013年1月10日、有効回答者数1,035人。回答者の地域別割合は北海道3.9%、東北3.0%、関東48.6%、中部14.6%、近畿19.0%、中国・四国5.7%、九州・沖縄5.2%で、業種は製造業(39.4%)、建設・土木・不動産(12.9%)、通信・メディア・情報サービス (9.3%)、商業・流通・飲食(9.3%)が多い。上場企業は全体の26.0%。企業の課長以上でBCPやリスクマネジメントについて認識のある人が答えている。 またこの調査は2011年7月に実施した同調査を継続して、企業の事業継続に対する取り組みや意識にどのような変化が生じたかといった点も含め調べている。
■現在のBCP策定状況
現在のBCPの策定状況(n=1035)は「策定済み」と回答した企業が40.4%で、「策定中」(30.0%)を含めると70.3%となり7割を超えた。このうち上場企業(n=269)のBCP策定済みの割合は6割近く(58.0%)に達する。一方で、BCP策定済みの未上場企業(n=682)は約3分の1(34.8%)。従業員数が多くなるにつれてBCP策定済み企業の割合は増え、500人以上(500-999人)の企業(n=87)で半数を超える結果となった(56.3%)。5000人以上の企業(n=161)では約3分の2(66.5%)がBCP策定済みである。
業種別にみると、早くからBCPの取り組みが進展している金融・保険業(n=41)がBCP策定済み75.6%と多く、策定中(14.6%)も含めると9割を超える。教育・医療・研究機関(n=80、25.0%)や商業・流通・飲食(n=96、27.1%)が約4分の1程度の策定割合にとどまっており、事業継続の取り組みにやや遅れがみられる。
■BCP策定状況の変化【追跡調査】
前回調査(2011年7月)の回答者に対する追跡(n=586)では、東日本大震災発生以前のBCP策定済みは24.6%だったが、現在は37.0%となった。(図表1-2)
企業規模では、従業員数500-999人、1000-4999人の、中小‐中堅企業の現在のBCP策定済みの割合(それぞれ50.0%、52.5%)は、東日本大震災発生以前の従業員5,000人以上の企業のBCP策定済みの割合(50.5%)と同水準まで達した。
業種別のBCP策定済みの割合は、元々取り組みが進んでいた金融・保険に加え、通信・メディア・情報サービスが約2倍、教育・医療・研究機関が約2.5倍に増加。一方で、製造業、物流業、商業・流通・飲食などサプライチェーンの維持が事業活動の根幹である業種は、BCP策定の拡がりの動きは見られるものの、策定済みの増加割合は比較的低い。
■BCPの想定リスクとその対象
現在の自社のBCP(策定中・策定を検討中含む)で、どのようなリスクを想定するかについては(n=827、複数回答)、「地震(主として直下型地震)」(73.9%)が最も多く、以下「地震(東海・東南海・南海連動地震等の超広域地震)」(65.9%)、「地震以外の自然災害(風水害等)」(47.5%)となっている。自然災害を想定する企業が多い。(図表2-1)
また現在の自社のBCP(策定中・策定を検討中含む)の対象拠点は(n=827、複数回答)、「本社」(90.0%)が最も多く、「支社・事業所(工場、研究所含む)」(59.7%)、「営業所・営業拠点」(29.9%)と続く。(グラフ=図表2-3)物流拠点や取引先まで含めている割合は非常に少ない状況にある。これは追跡調査(n=371)の状況を見ても、それほどポイントの増加が見られずBCPの対象拠点は広がっていないことがうかがえる。
■災害・事故発生後の時系列の事業継続対策状況
BCPが策定されていない企業でも、防災対策の一環として部分的な取り組みが行われているケースがあることから、この調査ではBCPの策定状況にかかわらず、企業の対策の状況について聞いている。それによると、災害・事故等発生時の体制設置や、被災・被害状況の確認など、いわゆる初動段階における手順ついては、相対的に対策をとっている割合が多い。一方、早期に業務を復旧させるための手だてや、リソース不足の際の代替案策定など応急・復旧段階での対策の割合は低い。さらに応急・復旧段階での対策を自社リソースに関する部分と、取引先など外部との連携に関係する部分に分けてみると、後者の取り組みは遅れている。(図表3-1)
■現在のBCPに不安
現在BCPを策定済み・検討中・検討予定である回答者(N=827)に、現在の自社のBCP(策定内容・検討内容)に対する課題の有無を聞いたところ、半数超(53.1%)の企業が、現状の自社のBCPに対し、策定内容が不十分、策定が思うように進まないなどの課題認識を持っているという結果が出ている。
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
現場対応を起点に従業員の自主性促すBCP
神戸から京都まで、2府1県で主要都市を結ぶ路線バスを運行する阪急バス。阪神・淡路大震災では、兵庫県芦屋市にある芦屋浜営業所で液状化が発生し、建物や車両も被害を受けた。路面状況が悪化している中、迂回しながら神戸市と西宮市を結ぶ路線を6日後の23日から再開。鉄道網が寸断し、地上輸送を担える交通機関はバスだけだった。それから30年を経て、運転手が自立した対応ができるように努めている。
2025/02/20
-
能登半島地震の対応を振り返る~機能したことは何か、課題はどこにあったのか?~
地震で崩落した山の斜面(2024年1月 穴水町)能登半島地震の発生から1年、被災した自治体では、一連の災害対応の検証作業が始まっている。今回、石川県で災害対応の中核を担った飯田重則危機管理監に、改めて発災当初の判断や組織運営の実態を振り返ってもらった。
2025/02/20
-
-
2度の大震災を乗り越えて生まれた防災文化
「ダンロップ」ブランドでタイヤ製造を手がける住友ゴム工業の本社と神戸工場は、兵庫県南部地震で経験のない揺れに襲われた。勤務中だった150人の従業員は全員無事に避難できたが、神戸工場が閉鎖に追い込まれる壊滅的な被害を受けた。30年の節目にあたる今年1月23日、同社は5年ぶりに阪神・淡路大震災の関連社内イベントを開催。次世代に経験と教訓を伝えた。
2025/02/19
-
阪神・淡路大震災30年「いま」に寄り添う <西宮市>
西宮震災記念碑公園では、犠牲者追悼之碑を前に手を合わせる人たちが続いていた。ときおり吹き付ける風と小雨の合間に青空が顔をのぞかせる寒空であっても、名前の刻まれた銘板を訪ねる人は、途切れることはなかった。
2025/02/19
-
阪神・淡路大震災30年語り継ぐ あの日
阪神・淡路大震災で、神戸市に次ぐ甚大な被害が発生した西宮市。1146人が亡くなり、6386人が負傷。6万棟以上の家屋が倒壊した。現在、兵庫県消防設備保守協会で事務局次長を務める長畑武司氏は、西宮市消防局に務め北夙川消防分署で小隊長として消火活動や救助活動に奔走したひとり。当時の経験と自衛消防組織に求めるものを聞いた。
2025/02/19
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/02/18
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方