総務本部総務法務部主幹の手嶋浩平氏(左)と中川和斗氏

住友ベークライト(東京都品川区、藤原一彦社長)は2019年度、企業に対する情報開示要請の高まりを受け、リスクマネジメントの改善に着手した。明確なルールがなかった主要リスクの選定基準・手順を見直すとともに、リスクの監視や低減・未然防止にかかる日常のリスクマネジメント体制を再整備。結果、PDCAプロセスと役割分担のわかりやすさが高く評価されている。同社の取り組みを紹介する。

住友ベークライト
東京都

住友ベークライトは2019年度、リスクマネジメントの改善に着手した。前年に金融庁・金融審議会のワーキンググループが企業に情報開示を促す提言を発表、これを受けて「企業内容等の開示に関する内閣府令」が改正され、開示情報の充実が求められるようになった頃だ。

リスクマネジメント委員会事務局を担当する総務本部総務法務部主幹の手嶋浩平氏は「それまで当社の有価証券報告書は形式的なリスク情報の開示で済ませていたが、それではもったいないという話になった。とはいえ、リスクの洗い出しなどのプロセスに難点もあったため、運用の見直しが必要になった」と振り返る。

当時のリスクマネジメント委員会は、時事的に話題となったリスクを取り上げて対策を協議していたものの、リスクの洗い出しには明確なルールが決まっていなかったという。

15部門の統轄執行役員が「質問票」に回答

そのため2019年度から、リスクの洗い出しに「主要リスク抽出質問票」を用いるよう変更した。総務本部、人事本部、経理企画本部といった管理部門、情報通信材料事業、HPP事業、クオリティオブライフ関連製品事業などの各事業部門、合わせて15部門について、それぞれを統轄する執行役員がこの質問票に回答する。

質問票には、経営に重大な影響を与えるリスクと発生可能性、リスクが顕在化したときの具体的な影響、現段階の対策を入力。発生可能性は「高・中・低」、影響度は「大・中・小」と、3段階から選択する。「調査票の記載になるべく手間がかからないよう項目やランクをシンプルにし、記載しやすいよう工夫した」と手嶋氏は話す。

リスクの影響度を測るうえでは、被害金額だけではなく、人命や評判、拠点稼働が損なわれることの影響も指標として導入している。主力の自動車向け、半導体向け製品はBtoBであるとはいえ、環境・人権・労働環境への意識が高い業界。同じく総務本部総務法務部主幹の中川和斗氏は「どちらの業界も海外企業との取引が多く、サステナビリティ調達が重視されている。レピュテーションリスクへの感度は非常に高い」と説明する。

●主要リスクの選定プロセス