取締役の義務・役割・責任【後編】
会社法の主要ポイント(1)
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。2006年慶應義塾大学文学部人文社会学科人間関係学系社会学専攻卒業、09年同大学大学院法務研究科法学未修者コース修了、10年弁護士登録、21年公認不正検査士(CFE)認定。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2023/07/11
弁護士による法制度解説
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。2006年慶應義塾大学文学部人文社会学科人間関係学系社会学専攻卒業、09年同大学大学院法務研究科法学未修者コース修了、10年弁護士登録、21年公認不正検査士(CFE)認定。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
6月、我が国の多くの株式会社において定時株主総会が開催され、取締役をはじめとする役員の選任等が決議されました。読者の皆様の中には、6月に開催された定時株主総会において取締役に選任された方、あるいは新任取締役のサポート業務をなさっている方がいらっしゃるのではないかと思います。
前回は、株式会社の特徴、株式会社と取締役との関係、取締役の義務について取り上げてご説明しました。今回は、より具体的に取締役の役割、責任等についてご説明したいと思います。
前回、すべての株式会社において株主総会と取締役とが必須の機関である一方、取締役会の設置・非設置については選択可能であるとご説明しました。その上で、取締役会の設置・非設置によって株主総会の権限も変わってくる旨をお伝えしました。この点、取締役会の設置・非設置によって影響を受けるのは株主総会のみならず、取締役の役割も同じです。
取締役会が非設置の株式会社において、取締役は、①株式会社の業務の決定をし、②株式会社の業務の執行を行うこととされています(会社法348条)。なお、①の業務の決定について、取締役が2人以上いる場合には、その過半数をもって決定するとされています(同条2項)。
このことからもお分かりいただけるように、取締役の人数と取締役会の設置・非設置とは論理的には無関係です(ただし、取締役会設置会社において、取締役は3人以上でなければならないとされています(331条5項))。
これに対し、取締役会設置会社において、取締役会はすべての取締役で組織され(362条1項)、取締役会が、次のことを行うものとされています(同条2項)。
なお、①の業務執行の決定について、重要な財産の処分及び譲受け、多額の借財など重要な業務執行の決定を取締役に委任することはできないとされています(同条4項)。
また、取締役会設置会社における業務の執行については、①代表取締役、②代表取締役以外の取締役であって、取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたもの、が行うものとされ(363条1項)、これらの取締役は、3カ月に1回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければなりません(同条2項)。
このように、株式会社において、取締役は大きく業務の決定と業務の執行という2つの役割を担っており、取締役会設置会社においては、業務執行の決定が原則として取締役会の役割とされていることに特徴があるといえます。
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