2023/05/18
事例から学ぶ
重電機メーカーの明電舎(東京都品川区、三井田健社長)は2016 年度から、全社的リスクマネジメント活動を開始した。コーポレートガバナンスの強化やステークホルダーからの要求など、社会情勢の変化に合わせた取り組み。3ラインモデルと呼ばれる機能分担手法とCSAと呼ばれるリスク分析・評価手法を用いて体制を整備し、一般社員や管理職のファシリテーションを充実して重要リスクの把握、共有に務めながら活動への理解を深めている。
明電舎
東京都
※本記事は月刊BCPリーダーズvol.38(2023年5月号)に掲載したものです。
❶3ラインモデルとCSAを活用した体制整備
・3ラインモデルと呼ばれる機能分担の手法と、CSAと呼ばれるリスク分析・評価の手法を活用し、より現場に即した全社的リスクマネジメント体制を整備。組織改革でグレードアップを図っている。
❷リスクへの理解・共有深めるファシリテーション
・ファシリテーションを活用した重要リスクの選定により、活動に対する全社的な理解と共有を深める。幹部メンバーによるプレ議論も行って、経営層がリスクマネジメントに積極的にコミットしている。
❸一般社員向けの内部統制ワークショップを開始
・内部統制やリスクマネジメントの重要性をわかりやすく理解してもらうための一般社員向けワークショップを開始。活動への参加意識を高めて隅々までの浸透を目指している。
体制整備は3ラインモデルとCSAを活用
明電舎は全社的リスクマネジメントの体制を、内部監査人協会(IIA)の3ラインモデルをもとに整備。それまで各事業部や工場、関連会社に任せていたリスク管理を「第1ライン」としてまとめ、CSA(Control Self-Assessment:統制自己評価)と呼ばれる手法を用いてリスク分析、評価をしたうえで対応方針を作成するようにした。
同社ガバナンス本部・内部統制推進部副部長の馬上(もうえ)重幸氏は、CSAのメリットを「実際に業務を担当している部門が自ら管理策の有効性を評価し、改善に取り組む方法で、より現場に即した対策が考えられる。何よりも現場でのリスクマネジメント意識の向上が期待できる」と説明する。
一方で3ラインモデルは、3つの機能分担によるリスクマネジメント手法。内部統制推進部や人事、総務などのスタッフ部門を含む「第2ライン」は、第1ラインのリスクコントロールのモニタリングやサポート、指導を担う。また「第3ライン」の経営監査部は、チェック機関としての役割を果たす。
2016年度のスタート時はチェック機関である経営監査部がサポートしながら、第1ラインでCSAを実施していた。しかし2020年度に内部統制推進本部、2022年度にガバナンス本部の設置などの組織改革を行い、現在の体制を築き上げた。
事例から学ぶの他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方