■目標達成は一筋縄ではいかない
その日ハルトと会社の同僚の山ガール、マミさんとミユキさんは、たまたま社員食堂で一緒になり、同じテーブルについていました。どうやらマミさんにちょっとした悩みがあるようです。
「よく上司から"SMART"を使ってしっかり目標を立てなさい、といわれて、実行してはみるんだけど、なかなか最後までやり遂げるのは難しいのよね」。ミユキさんも同感、同感とうなずきます。
「いきなり業務にSMARTを適用するのは、確かに少し難しいかも。人事評価にもつながってくるし、プレッシャーだよね。もっと身近なことにSMARTを当てはめて少し慣れ親しんでは? 例えば山登りの目標とか」と、ハルトはアイデアを提案しました。
マミさんはなるほどねという顔をしましたが、やや懐疑的でもあります。「といっても、富士山に登るぞーっ!という目標だけだと、ちょっと単純すぎないかしら?」
ハルトは笑いをこらえながら言います。「例えば、3日坊主で終わっている山のトレーニングや勉強はない? 以前から気になっていたものの、いつも計画倒れで終わっている山とかは?」
「ああ、そういえば…」と、マミさんは何かひらめいたようです。そして「ミユキも何か目標をつくってみたら?」。「そうね、じゃあ私は…」。ハルトに触発された2人は、それぞれSMARTを使って山の目標を組み立てることになったのです。
■S・M・A・R・Tの意味と目的
ところで、ハルトたちの会話に出てきた「SMART」という言葉。すでに本連載で紹介したものですが、初めての読者のために復習をかねて述べておきましょう。SMARTは目標を立てる際に考慮すべき5つのポイントのことで、これにそって組み立てれば、実行と達成が容易になるというもの。
まず「S(Specific)」。これは何をどのように達成したいのか具体的に書くという意味です。「M(Measurable)」は、目標の到達度をはかるものさしを決めておくこと。「A(Achievable)」は単なる理想や自分の力量を超えた目標ではなく、現実的に達成するための手段や条件が揃っている(または揃えることが可能である)ということです。
「R(Relevant)」は、これから達成しようとすることについて実行する価値があるか、実行するのは今でよいか? おおもとの方針や原則に沿っているといったこと。「T(Time-bound)」は期限が設けられていること。あることを成し遂げるためにどんなに時間をかけてもよいというのは、目標を設定しないのと同じです。制限時間内に達成するところに目標達成の意義と価値があるからです。
さてマミさんの目標は「山の読図術をマスターする」とのこと。今まで食わず嫌いで通してきた読図の基本をしっかり覚えようと心に決めました。ミユキさんは「テント泊デビューするための体力をつける」。最近では登山女子が自前のテントを背負って山を歩く姿を少なからず見かけます。カッコいいなあ、いつかは私も…とミユキさんは考えていますが、まずはテントを背負う体力をつけるのが先です。
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