画像はイメージ(写真AC)

静岡県牧之原市にある認定こども園で、登園時の送迎バスに置き去りにされ、園児が亡くなった痛ましい事件がありました。子を持つ親の気持ちになり、テレビの前で手を合わせ、ご冥福をお祈りいたしました。今回は、保育事故の現実をみなさんに知っていただき、「保育事故防止」について、考えるきっかけとなるような話題を提供できればと思っております。

政治が異例の早さで動く

今回の死亡事故の内容は、皆さんがご承知の通り、多くの方が視聴する各局のニュースやワイドショーの番組で連日取り上げられました。事故があった認定こども園の所在地である牧之原市では、該当園に対して改善勧告を出しました。「改善勧告」とは単なる行政指導とは異なり、改善が図られない場合や期限までに報告がない場合は、事業停止命令が出されるとても厳しい処分です。福岡の同様の事故の際にも改善勧告が出されています。

異例だと感じたのは、政治の動きの早さです。政府は来年4月から保育所や幼稚園などの送迎バスに安全装置の設置を義務づけることを発表しました。

しかしながら、保育の死亡事故はバスだけではありません。過去も現在もバス以外の場所で発生し続けていることをお伝えしたいと思います。

保育中死亡事故の7割が睡眠中

以下の表は2004年~2020年に発生した保育中に亡くなったお子さんの数を示しています。

認可保育所 認可外保育施設 その他 合計
64件 142件 9件 215件


2004年~2020年 死亡事故報告件数(内閣府子ども・子育て本部)をもとに筆者作成。年齢別、死因、事故発生状況の詳細については、参考文献に記した内閣府のHPをご確認ください

内閣府の集計では、約16年の間に215人の園児が死亡していることが記されています。年齢別では0〜1歳が全体の8割を占め、ついで2歳児が多く、死亡事故の7割が睡眠中に発生しています。睡眠中の死亡事故については、内閣府から周知徹底するよう「注意喚起」が出され、0歳児の睡眠中は5分に1回、1~2歳児は10分に1回のブレスチェックを行う内容が自治体から保育施設に通達されました。それに伴い、民間企業では睡眠中のブレスチェッカーを販売。多くの自治体では機器を購入することで、補助金や助成金の対象になりました。しかし、対策を講じているにもかかわらず、過去に発生した睡眠中の死亡事故と同様の事故が今もなお発生しています。

なぜ保育中の死亡事故はなくならないのか

あおむけ寝やブレスチェッカーを推奨するようになってから睡眠中の死亡事故は減少傾向ではあるものの、ゼロではありません。

事故がなくならない理由の1つとして、ホメオスタシス理論を仮定します。安全装置やブレスチェッカーなどが装備されることにより、「装置が入ったから安全になった」(リスクの低下)と感じると、人は油断し、よく確かめることをしなくなります(危険な行動)。また、正常性バイアスも働き「事故はおこらないだろう」といった楽観的な心理状態が重大事故につながるのではなかと考えます。

そこで、筆者が必要と考える3つの対策を提唱いたします。