2022/08/29
事例から学ぶ
世界最大の総合楽器メーカーとして、代名詞のピアノだけでなく管楽器や電子楽器でも高いシェアを誇るヤマハ(静岡県浜松市、中田卓也代表執行役社長)。一元的にリスクを管理するリスクマネジメント委員会を設置した2010 年以降、経営戦略上の位置づけをはじめ、運営体制、リスク評価の仕組み・手法、各部門の活動を絶えず進化させてきた。常に変化するリスクに、柔軟に、素早く対応していくためだ。同社のリスクマネジメントの取り組みを紹介する。
記事中図提供:ヤマハ
ヤマハ
静岡県
※本記事は月刊BCPリーダーズvol.27(2022年6月号)に掲載したものです。
❶主体的に進化させてきたリスクマネジメント体制
・一元的にリスクを管理するリスクマネジメント委員会を設置して以降、経営の位置づけや体制を変えながら、徐々に最適な運営の形態やリスク分析・評価、整理の手法を確立
❷戦略的に取り組むべき企業リスクを選定
・毎年のリスク見直しは、数値データやヒアリングをはじめさまざまな情報から定量的・定性的に実施。社会情勢の変化を反映するかたちでリスクレベルを柔軟に設定する
❸リスクマネジメントの経営的位置づけを高める
・グループ規程体系や中期経営計画の中にリスクマネジメントを明文化。重要度を高めることでグループ全体の従業員の意識にリスクが浸透し、普段の議論にも反映
リスクマネジメントの体制
ヤマハでリスクマネジメントを担当する経営企画部管理グループ主事の大西多佳子氏は「リスクは常に変化する。企業には、社会情勢に合わせたリスクマネジメントが求められています」と語る。
リスク回避と損失の最小化を図る目的で、ヤマハが一元的にリスクを管理するリスクマネジメント委員会を設置したのは2010年だった。当時は取締役会の諮問機関だったが、2013年には機動性を上げるために社長の諮問機関に位置づけられた。
同委員会はこの頃に基本方針を決定し、リスク分類と評価を行うようになった。現在の委員会メンバーは、委員長を務める代表執行役社長を含め執行役と執行役員で構成され、事務局は経営企画部が担当している。
リスクマネジメント委員会の下部には、全社横断的に重要リスクを担当する専門の部会を設けている。災害が発生したときの方針決定や災害対策総本部の立ち上げなどを担当するBCP・災害対策部会、財務情報の信頼性確保、会社財産の適切な保全などを行う財務管理部会、法令や倫理規範に則った業務遂行をモニターするコンプライアンス部会、適切な輸出管理を推進する輸出審査部会、情報管理に関わる方針の決定や管理体制を監督する情報セキュリティ部会の5部会が存在する。
ヤマハでは現在、リスクマネジメントの対象となる33項目のリスクを「外部環境リスク」「経営戦略リスク」「事業活動に関わる業務プロセスリスク」「経営基盤に関わる業務プロセスリスク」の4つに分類。想定損害規模と想定発生頻度から各リスクを分析し、評価している。
リスク分析は定性的かつ定量的で、リスクごとに被害金額や被害規模など具体的な数値による評価基準を定めている。大西氏は「リスクの定量化は簡単ではないが、特性に応じて試算することで各リスクを公平に評価できる」と話す。2016年から現在の形のリスクマップで各リスクを整理している。
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