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「メタバース」というキーワードを目にすることが多くなってきた。デジタルトランスフォーメーション(DX)やスマート化などでも取り組まれてきたサイバーセキュリティ上の課題がそこにはあり、そしてあるテクノロジーが解決に導く(かもしれない)。

既にメタバースへ片足を突っ込んでいる

メタバースの解釈や定義はいくつかあるが、ここでは仮想現実(VR)、人工知能(AI)、ブロックチェーンといったテクノロジーによって築き上げられた仮想空間のことであるとしよう。

単に「仮想空間」と呼んでしまうと、また何かの焼き直しではないかと思えるかもしれない。仮想空間の概念は1980年代のサイバーパンク小説によってその概念が登場し、1990年代には多くのアニメやゲームの世界で登場してきたからだ。例えば、2006年頃に流行した Second Life という3DCGで構成された仮想世界などを思い出される方もおられるのではないだろうか。

では、メタバースは何が違うのか?

これはあくまでも筆者自身による解釈であるが、仮想空間の出来事を現実空間へとフィードバックできるようになったものではないだろうか。例えば、これまではゲームの中で戦って負けてもポイントが減るだけだったのが、メタバースの世界では本当に痛いと感じるようになるかもしれない。メタバースを体験したくなくなるような例え方をしてしまったが、楽しいとか心地良いといったこともあるわけだ。まさに1999年公開の映画「マトリックス」のような世界がいよいよ現実のものとなってきている。

これはデジタルトランスフォーメーション(DX)やスマート化、IoTなどによって、ビジネスのデータを解析し、そしてビジネスの現場へとフィードバックしていくことにも似ている。IoTであれば、IoTセンサーで現場のデータを吸い上げ、5G回線でクラウドに送信し、クラウドでAIが解析した最適解を現場へと再び5G回線を経て送り返す。このように仮想空間と現実空間が連携して、一つの何かが起こっている。そして、これまではインターネット上の仮想空間をスマホやラップトップの画面に呼び出して閲覧していた。

しかし、メタバースでは私たち自身が仮想空間の中に入っていくことができる。そのためにARグラスやVRグラス(メガネ型のあれ)のような仮想空間を覗くデバイスや、顔がどちらを向いているのかといったことやストレスを感じているかといったユーザーの身体情報を識別するためのデバイスなどが用いられることになる。顔の向きは何も新しい装置を用意する必要は無い。既に広く普及しているワイヤレスイヤホンなどにも顔の向きを識別するセンサーが入っている。また、ストレスの有無なども既に広く普及しているスマートウォッチやフィットネストラッカーなどで識別が可能だ。

既に多くの人たちがメタバースに片足を突っ込んでいる。

消費者の懸念

さて、これまでウェブ上でのサービス提供事業者が得られる情報は、ユーザーが入力した文字情報や、Webサイトでの滞留時間や導線といった人為的な操作に基づくデータがほとんどだった。メタバースの世界では先に述べたとおりユーザーが無意識に提供しているデータを含め、より多くのデータをサービス提供事業者が収集することも可能となる。このことに期待するマーケティング担当者さんも非常に多く、顧客体験の向上や成約率の向上などが期待されている。

同時に、このとき消費者が感じる懸念として、そのデータは許可を得て収集されたものであるか? 必要以上の情報を収集しようとしていないか? 収集したデータは適切に保護されているのか? 収集したデータを第三者に共有したりしないか? といったことがあげられる。場合によっては、消費者の懸念するこれらが適切に行われていないことで、個人情報保護法やGDPRなどのデータ保護に関連した法規制を遵守できないといったこともある。

そのため、サービス提供事業者としてまず最初に考えることは、そのサービスのターゲットが誰であるのかということ。そのターゲットに関連するデータの種類は何であるかということ。そして、その中からマーケティングなどを成功させるために必要な最小のデータは何であるかということを知るところから始まる。この必要な最小のデータについては、多くのデータ保護法などにおいてもデータ最小化の原則として求められているため、メタバースに限らず多くの場面で意識していかなくてはならない。

そして、この収集したデータを保護し、透明性をもたらすための技術としても注目を集めているのがブロックチェーンである。