新しいデータベースシステム

データを数珠繋ぎにして云々と小難しい話になりがちなブロックチェーンについて、ここで例え話を用いて簡単に解説したい。

あなたは7つの大事な宝物を持っている。そして、この7つの宝物が全て揃うと、龍が出てきて願い事を叶えてくれる(どこかのアニメで聞いたことのあるような話だが、ここでは気にしない)。

さて、あなたの宝物を狙う悪党がいた時、次のいずれの方法で守るべきだろうか?

1.厳重に守られた一つの金庫に7つの宝物を入れておく
2.別々の場所にある7つの金庫にそれぞれ1つずつ入れておく

従来のように一つのデータベースシステムにデータを集めておこうとするのが1の考え方。そして、2のような考え方を実現するためのテクノロジーがブロックチェーンだと言える。

ところで、どのようにして宝物を守るのかという話だけであれば、龍が出てくるというくだりは余談が過ぎると思われてしまうかもしれない。実は、ブロックチェーンの優位性を理解する上で、この龍の話が重要な意味を持つ。7つの宝物が全て揃うと龍が出てくるということは、一つだけ手に入れても龍は出てこない。つまり、ブロックチェーンによる分散化はセキュリティレベルも高めることになる。

これらのことから、ブロックチェーンとは大事なデータを分散して保存してくれる新しいデータベースシステムの仕組みとしてイメージしてみると、少しは分かり易いのではないだろうか。

責任の所在

既にブロックチェーンはビットコインやイーサリアムといった暗号資産と呼ばれる分散型ファイナンスなどで多く用いられている。中央集権的に管理されている通貨と分散化して国境をも容易に越えてしまう暗号資産とで一長一短が議論されているように、全ての場面でブロックチェーンによる分散化が適しているわけではないことには注意が必要だ。

例えば、中央集権的に提供されているサービスであれば、あなたのことを知っていて収益化しているのが誰で、責任の所在も明確になる。ところが、ハッキングなどをされてしまえば、そこにある多くの人たちのデータが影響を受ける可能性もある。そのため、メタバースにおいても分散化されたものもあれば、中央集権的なものもある。そのメタバースをユーザーが管理している場合は、それを分散型と見なすことが多い。メタバースにおける責任は、メタバースが分散化されているか中央集権化されているかによっても異なり、一人の管理者によって全ての個人データを処理し、個人データの処理方法を決定している場合もあれば、メタバースを介して複数人で個人データの処理を行なっている場合もある。個人データに関する透明性を確保するためにも、どのようにデータを処理するのかといったルールを作成し、データの管理者と処理者が誰なのかといったことを明確にすべきだろう。

今まさしくWeb3.0などの言葉で表されるように新しい世界へと変化のさなかにあるが、新しいテクノロジーや概念による恩恵を授かるのは決して私たちだけではない。

どこかで誰かもその機会を狙っている。


本連載執筆担当:ウイリス・タワーズワトソン
CyberSecurityAdvisor,CorporateRiskandBroking足立照嘉