2022/05/24
事業継続及び防災の取組に関する実態調査を読み解く
「事業継続及び防災の取組に関する実態調査を読み解く」第5回は、リスクへの対応を実施していく上での課題について。内閣府の「令和3年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」では、リスクが発生した際の対応を従業員に浸透させるような取り組みを実施していると回答した企業に対して、リスクへの対応を実施していく上での課題を聞いている。平成27年度時点からほぼ毎回出題されている質問だが、回答傾向は全くといっていいほど変わっていない。「自社従業員への取り組みの浸透」が87.2%と突出して高く、次いで「取り組み時間・人員の確保」が48.3%と続く。過去の調査の結果も踏まえ、この課題を解決する糸口を探ってみたい。
令和3年度における「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」
まずはリードとは別の質問から。
今回内閣府が実施した調査では、BCPの「策定や推進」にあたっての問題点が出題されている(n=954、BCPを策定済みの企業)。上位回答は、「部署間の連携が難しい」(34.4%)、策定する人手を確保できない(31.3%)、BCPに対する現場の意識が低い(31.1%)で、人に関す課題が占める。
リスク対策.comが過去に行ってきたBCPの実態調査でも、「従業員の意識」については、大きな課題になっている。BCPに基づき災害時に実際に行動するのは従業員である。そのことを考えれば、「従業員の行動」はBCPの実効性(期待通りに機能するか)と密接にかかわっているはずである。
そこで、前回載せた表を再度見てほしい。平成29年度の調査から、BCPがどの程度、災害時に役に立ったかを比較してみた。質問の聞き方が、実際に過去の災害で被害を受けた企業に限定していたり、いなかったり、また当然、サンプルの母集団は調査ごとに異なるため、一概に比較することは適切でないかもしれないが、傾向を見る上での参考としてほしい。少なくともここ数回の調査では、BCPの実効性が高まっているとは言えないことは分かる。
- keyword
- 内閣府
- BCP
- 事業継続
- 策定率
- 企業の事業継続及び防災の取組に 関する実態調査
事業継続及び防災の取組に関する実態調査を読み解くの他の記事
おすすめ記事
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方