「事業継続及び防災の取組に関する実態調査を読み解く」第5回は、リスクへの対応を実施していく上での課題について。内閣府の「令和3年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」では、リスクが発生した際の対応を従業員に浸透させるような取り組みを実施していると回答した企業に対して、リスクへの対応を実施していく上での課題を聞いている。平成27年度時点からほぼ毎回出題されている質問だが、回答傾向は全くといっていいほど変わっていない。「自社従業員への取り組みの浸透」が87.2%と突出して高く、次いで「取り組み時間・人員の確保」が48.3%と続く。過去の調査の結果も踏まえ、この課題を解決する糸口を探ってみたい。

令和3年度における「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」

第1回:BCPの見直し頻度と過去の役立ちの関係

第2回:被災時に役立つもの

第3回:重視するリスク

第4回:BCPで対象とする災害


まずはリードとは別の質問から。

今回内閣府が実施した調査では、BCPの「策定や推進」にあたっての問題点が出題されている(n=954、BCPを策定済みの企業)。上位回答は、「部署間の連携が難しい」(34.4%)、策定する人手を確保できない(31.3%)、BCPに対する現場の意識が低い(31.1%)で、人に関す課題が占める。

リスク対策.comが過去に行ってきたBCPの実態調査でも、「従業員の意識」については、大きな課題になっている。BCPに基づき災害時に実際に行動するのは従業員である。そのことを考えれば、「従業員の行動」はBCPの実効性(期待通りに機能するか)と密接にかかわっているはずである。

そこで、前回載せた表を再度見てほしい。平成29年度の調査から、BCPがどの程度、災害時に役に立ったかを比較してみた。質問の聞き方が、実際に過去の災害で被害を受けた企業に限定していたり、いなかったり、また当然、サンプルの母集団は調査ごとに異なるため、一概に比較することは適切でないかもしれないが、傾向を見る上での参考としてほしい。少なくともここ数回の調査では、BCPの実効性が高まっているとは言えないことは分かる。