2022/05/19
事業継続及び防災の取組に関する実態調査を読み解く
「事業継続及び防災の取組に関する実態調査を読み解く」第2回は、被害を受けた際に有効であった取り組みについて。内閣府の「令和3年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」の結果概要では、サマリーとして、過去の災害で被害を受けた際に有効であった取り組みについて、全体では「社員とその家族の安全確保」(45.2%)、「備蓄品(水、食料、災害用品)の購入・買増し」(40.1%)、「リスクに対する貴社の基本的な対応方針の策定」(37.0%)が上位を占めたと解説している。大企業では「安否確認や相互連絡のための電子システム(災害用アプリ等含む)導入」(57.2%)、「社員とその家族の安全確保」(54.5%)、「リスクに対する貴社の基本的な対応方針の策定」(51.5%)という順になり、中堅企業では全体と同様の傾向となっている。注目したいのは、ここに「BCP」という回答は見当たらない点だ。果たして、BCPは役に立たなかったのか。
令和3年度における「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」
全体上位5項目を下図に示す。グラフの中に、BCPという言葉は見当たらない。BCPの中に含まれている項目が並んでいるようにも見受けられるが、BCPの取り組みの中身を聞いた質問なのかはこのグラフだけでは判断できない。そこで質問本文から見てみたい。
質問は以下の通り。
「問24において、1~3と回答した人におうかがいします。被害を受けた際に有効であった取り組みについて、下記表1の選択肢より該当する番号を〇で囲んでください。」
お気付きの通り、「BCP策定・見直し」も選択肢に入っている(選択肢17)。しかし、回答の詳細(グラフ下)を見ると、「BCP策定・見直し」との回答は、18.1%と全体の中でもかなり低い。したがって、冒頭に紹介したサマリーにはBCPの項目すら載らなかった。
ちなみに、問24とは、「近年、日本で発生した地震や水害等の自然災害により実際に事業の継続に影響を受けたことはありますか」との質問で、1~3は、1.直接被害を受けた、2.間接被害を受けた、3.直接・間接の両被害を受けた―の3つである。すなわち、問27の回答者は、アンケート回答の母集団のうち、過去の災害で被害を受けた組織に限定されている(n=1058)。結果を見る限り、災害で被災した際でもBCPが役に立ったと感じられていないというようにも読める。ちなみに、直接被害を受けたとの回答は20.7%、間接被害を受けたのは22%、直接、間接の被害の両方を受けたとの回答は9.5%で、実に全体の半数以上に当たる52.2%の企業が災害による被害を受けているとしている。
「このデータだけでは、BCPに取り組んでいた企業が被災時に役立ったものが何だったのかは把握できない」と疑問に思われる方もいるかもしれない。なぜなら、対象となるサンプルには、BCPを策定している組織と、そうでない組織が混在しているからだ。ただし、上記グラフの通り、すでに大半がBCPを策定済と回答している大企業に限っても、「BCPの策定・見直し」が役立ったとの回答が32%にとどまるということは、①災害時においてはBCPの策定・見直しプロセス全体よりも、対処療法的な安全確保や備蓄、安否確認のほうが役に立ったと感じやすい、もしくは、②BCPの発動に至るような規模の被災は受けていないため、BCPの成果を感じにくい、――のいずれかの要因と考えられる。
そこで、ヒントとなるのが2017年3月に内閣府が公表した「企業の事業継続に関する熊本地震の影響調査報告書」だ。
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