(イメージ:写真AC)

コストの減少、そしてコロナ禍によるテクノロジーの急激な進歩により、世界はかつてないほどにつながりを強め、より多くの人が自由市場、民主制度、繁栄そして技術革新を享受しています。この動きは今後ますます加速していくでしょう。英国は、すべての人にとって安全かつ自由で開かれたインターネット環境を提供するため、サイバーセキュリティの体制整備や支援、投資が重要であると考えています。

英国は、2021年12月に第三版となる「国家サイバー戦略2022」を発表しました。2011年と2016年の初版、第二版「サイバーセキュリティ戦略」から、「サイバー戦略」と名称を変えたこの最新版では、広範な視点でより包括的なアプローチを掲げています。

英国はサイバーセキュリティにおいて目覚ましい発展を遂げており、世界有数のサイバー大国として認知されています(2020年のハーバード大学ベルファーセンター「国家サイバーパワーランキング」では米国、中国に続いて第3位)。しかしながら、新たな問題が次々と発生し、増加の一途をたどるランサムウェア攻撃をはじめ、私たちがサイバー空間で直面する脅威は、ここ数年より強大で複雑、深刻化しています。

この新たな戦略では、安全保障、外交、法執行、人材・産業育成、レジリエンス、技術、イノベーションの各観点から、英国が直面する課題への包括的な取り組みを提示しています。政府のみならず、産業界から市民社会、学界、技術コミュニティ、そして個人に至るまで、社会のあらゆるステークホルダーに働きかけることを目指しています。これらの各コミュニティは、先の2つの戦略の成果と投資を土台として国のシステムを確たるものにする上で、極めて重要な役割を担っています。

5つの重要な要素

この戦略には、次の5つを重要な要素に掲げています。

まず、英国内のサイバーエコシステムを継続的に強化することが必要です。そのためには、適切な人材・知識・体制を導入し、優秀で多様な人材を確保することが不可欠です。これにより、より緊密な産学連携を土台とした国際競争力を持つサイバーセキュリティ産業と地域のイノベーションエコシステムを実現します。戦略の一環として、政府はサイバーセキュリティを専門職として確立させる取り組みを進めるとともに、他のパートナー国と連携しながら、共同して課題に取り組むアプローチを構築します。

第二に、高いレジリエンスを持った豊かなデジタル国家を作り上げることが重要です。そのために積極的にサイバーリスクを管理する英国企業や組織の数を増やし、奨励制度や状況に応じた規制の双方を活用しながら、彼らのサイバーレジリエンスの向上を促します。これを達成するにあたり、政府のシステムや重要国家インフラのサイバーセキュリティも確固たるものにしなければなりません。そのために、政府はネットワークおよび情報システムの規制を見直し、英国の組織のサイバーリスク管理改善を促進します。

第三に、サイバー空間に不可欠なテクノロジーのセキュリティにおいて、英国が積極的に中心的な役割を担える体制を整えることです。重要なテクノロジーに関する層の厚い研究基盤を土台に、例えば、安全なマイクロプロセッサ設計の分野など、世界的リーダーとしての英国の地位を確立し、次世代のコネクテッド技術やインフラを確保します。これを達成するため、日本をはじめ英国の主要なパートナー国と協調し、サイバーセキュリティ向上のための世界共通のデジタル技術基準の策定を支援します。

第四は、責任あるサイバー大国として、英国が日本や他のパートナー国と協力して集団的サイバーセキュリティおよびレジリエンスを高めることです。敵対者を阻止、抑止するため各国と連携して行動します。そのために、自由で開かれた、平和かつ安全なサイバー空間を促進するグローバルガバナンスについての議論を主導し、サイバー空間における国際法の適用を促進するため幅広い同盟関係を築きます。

最後の5つ目は、責任あるサイバー大国として、英国だけでなくより広範なサイバー空間のセキュリティを高めるため、英国が持つ敵対者を検出・阻止・抑止するための幅広いツールや技術を、より統合された形で独創的かつ日常的に利用することです。英国、その利益と市民、そして同盟国を守るため、国家主導型サイバー犯罪やその他悪意ある行動およびその実行者に関する情報を検出、把握、調査し、共有します。