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英国を構成する4つの国の一つ、ウェールズはロンドンから西へ250キロメートルほどに位置し、50社近くの日系自動車、エレクトロニクス、食品産業企業などが進出をしています。

世界規模で進む少子高齢化、気候変動そしてサイバー脅威など、ウェールズも山積する問題に直面しています。そんななか、将来世代にわたり住みやすい社会の実現に向け、ウェールズは世界初「The Well-Being of Future Generations Act 2015」を施行しました(https://www.futuregenerations.wales/about-us/future-generations-act/)。

これは健康、リジリエンス、そして世界に対しての責任など7項目を国の目標として設定、ウェールズ政府・行政機関の意思決定の際、上記目標達成に向けたビジョンを持つことを定めた法律です。2020年1月にウェールズ政府が発表した「International Strategy」(国際戦略プラン)に反映され、自動車、航空機、船舶の電動化、デジタルトランスフォーメーションに不可欠な化合物半導体、クリエーティブ産業、そしてサイバーセキュリティーの3領域でウェールズが国際社会に貢献することを目標としました。

英国有数のサイバーセキュリティーエコシステム 

Airbus、Thales、BT、Aston Martin、General Dynamics、SANS、Alert Logic。これはウェールズにサイバーセキュリティー関連の投資を行った企業例です。ウェールズには250社以上のサイバーセキュリティー関連企業が拠点をもち、OT(オペレーショナル・テクノロジー)、ICS(産業用制御システム)、IIoT(産業用IoT)、モニタリング・検知・分析、AI、サイバーフォレンジックなどに関する技術を豊富に有しています。

ウェールズは国際戦略としてサイバーセキュリティーに取り組んでいる

南ウェールズはSevern Valley Cyber Regionの一部を構成、GCHQ(英国政府通信本部)の下部組織であるNCSC(国家サイバーセキュリティーセンター)や、MOD(英国国防省)のセキュリティーコントロールセンターに地理的に近いことで、サイバーセキュリティー企業が集積する環境が整っています。 また南ウェールズNewportでは2021年5月11、12日の日程で、NCSC主催のサイバーセキュリティーイベント「CYBERUK2021」の開催も決定するなど、英国サイバーセキュリティー分野におけるウェールズの存在感は高まっています。

 今日におけるウェールズのサイバーセキュリティー産業を紹介する上で、「Cyber Wales」を抜きに語ることはできません。Cyber WalesはCIC (Community Interest Company)、公益法人の一種で、ウェールズ企業が互いに協力しサイバー攻撃に対する対処法を考えていくフォーラムとして、2014年に設立されました。Cyber WalesはNCSC(国家サイバーセキュリティーセンター)や英国他地域のサイバークラスターとの連携を通じ、情報の収集・共有を行っています。

共同設立者の一人、Pervade Softwareの代表 John Davies氏は設立の経緯について、以下のように述べました。

「ウェールズはお互いに助け合うことを知っている国、社会を良くする協力を惜しまない。サイバー攻撃の脅威は日々拡大、甚大な被害をもたらしている。互いに協力・知見を共有し、新たな攻撃に対する対処法を生み出さなければ、その脅威に打ち勝つことはできない」

Cyber Walesのもと、ウェールズ Cyber Security Clusterは南北にあり、合わせて1000以上の会員数を誇る英国でも有数なサイバークラスターへと成長を遂げました。最近ではGDPR、知的財産保護、女性サイバー人材の活躍、サイバー人材教育の分野に特化した分科会も活動をしています。