河川をまたぐ水路橋(写真:写真AC)

10月7日夜に発生した最大震度5強の地震で、東京23区内では計23カ所の漏水が発生した。あふれ出る水の様子が報道され、断水を心配する声もあがったが、翌朝6時までに漏水はすべて解消した。東京都水道局は東日本大震災以降、施設の耐震化や設備更新、点検・維持管理、緊急対応体制はもとより、水道管の2重化やネットワーク化を進めて災害時の給水維持に努めている。

ライフラインの強化(1) 東京都水道局

東京都水道局は、日本で最も多い約1363万人に水道を供給する。23 区と26市町に広がる水道管の全長は約2万7000㎞で地球全周の約7割にも達する。主な水源は東側を流れる利根川・荒川水系と西側を流れる多摩川。2017 年には災害時に水道復旧に駆けつける常設の応援部隊、東京水道災害救援隊を設立した。

10年ぶりの震度5強

10 月7日22時41分、千葉県北西部を震源とするM5.9の地震が発生し、東京都内でも10年ぶりに震度5強の揺れを観測した。千葉県市原市では養老川に架かる水道橋で水道管が破損し、水が噴き出した。東京都では足立区や葛飾区、世田谷区など22カ所で空気弁からの漏水が発生。水道管と水道メーターとの継ぎ目からの漏水も1カ所で確認された。あふれ出る水につかりながら作業する職員の姿が大きく報道された。

「職員が駆けつけ、翌日の6時頃までにすべての漏水はストップしました。原因は分析中です」と、東京都水道局給水部配水施設工事連絡調整担当課長の磨田行広氏は話す。

漏水が発生した空気弁とは、水道管内に溜まる空気を逃がしスムーズな水流を維持するための装置。通常、水が流れていると水圧でボールが上昇し、空気孔を押しつけて穴を塞いでいる。そこから水があふれた理由は、ボールがずれて開いた空気孔から水が漏れた可能性や、ボールを囲っているカップ自体がずれて隙間から水が漏れた可能性などが考えられるという。

 

被害のあった空気弁のうち、21カ所は翌日の午前2時頃までに作業を完了。空気弁に付随する補修弁を閉めることで漏水を止めた。午前6時頃に止水した1カ所は空気弁が深い位置に設置されていたため、補修弁ではなく水道管の弁を閉めて対応した。遠隔操作ができるのは一部の幹線に限られるため、すべての現地に職員が行き対応した。

一部の配水管を止めたが、断水は発生しなかった。「別の流路から水を供給できるバックアップ体制があるため、お客様への給水は止めていません。水の濁りも発生せず、水の供給ではご迷惑をかけずにすみました」と磨田氏は語る。

夜間や休日に漏水などに対応する職員は、23区内では6支所7拠点に7人ずつ配置されている。2人一組で作業にあたり、各拠点には連絡要員の1人と3チームが待機している体制だ。

10 月7日には、この21チームがすべて出動した。当日に別の場所で水道管の更新工事をしていた部隊も加わった。さらに連携している東京水道株式会社の職員も応援に駆け付けた。震度5弱以上では必要な職員が参集し、また震度6弱以上では全職員が参集する。一方、都庁では近隣で夜間、休日などに待機している管理職、災害対策用の職員住宅に住む職員などが初動要員として震度5弱で参集することになっている。