政治的リスクやテロリズムの脅威を概観できるリスクマップ
Aon / 2018 Risk Maps
合同会社 Office SRC/
代表
田代 邦幸
田代 邦幸
自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年より複数のコンサルティングファームにて、事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関するコンサルティングに従事した後、独立して2020年に合同会社Office SRCを設立。引き続き同分野のコンサルティングに従事する傍ら、The Business Continuity Institute(BCI)日本支部事務局としての活動などを通して、BCMの普及啓発にも積極的に取り組んでいる。一般社団法人レジリエンス協会 組織レジリエンス研究会座長。BCI Approved Instructor。JQA 認定 ISO/IEC27001 審査員。著書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)
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世界有数の保険会社グループである Aon (注1)は 2018 年4月に「2018 Risk Maps」を発表した。「Maps」と複数形になっているのは、政治的リスクやテロ、政治的暴力など複数の事象に関するリスクマップが含まれているからで、本稿の下の方に記載した「報告書本文の入手先」のページにアクセスし、「Access the Interactive Risk Maps」と書かれた部分をクリックすると、リスクマップが表示される(注2)。ちなみに上の図は2017年第4四半期における「Risk of doing business」の評価結果を表示させたものである。
また、同名の調査報告書がPDFで公開されているが、こちらの報告書にはリスクマップそのものは含まれておらず、リスクマップの基となる評価の拠り所となった調査分析結果が文章とグラフでまとめられている。
報告書は「Terrorism & Political Violence」(テロリズムと政治的暴力)と「Political Risk」(政治的リスク)の2つのセクションに大きく分かれており、いずれのセクションも調査リーダーのコメントと「High-level themes」という全体のサマリーに続いて、それぞれのセクションにおける主要なトピックに関する調査分析結果が示されている。各セクションに含まれるトピックは次のとおりである。
Terrorism & Political Violence
- Southeast Asia: Islamic State poses a sustained regional threat
(東南アジア: イスラム国による地域的な脅威の持続)
- Saudi Arabia: Risk and the politics of force
(サウジアラビア: 権力のリスクと政治)
- The impact of terrorism on tourism
(観光産業に対するテロリズムの影響)
Political Risk
- The balance of power is shifting in Asia
(アジアにおけるパワーバランスの変化)
- Housing bubbles - time to worry again
(住宅バブルが再び懸念されるとき)
- The global productivity puzzle
(世界的な生産性パズル)(注3)
- Latin America's super-election cycle
(ラテンアメリカにおける選挙の過密日程)(注4)
- Grounded: airline leasing and political risk
(航空機のリースと政治リスク)(注5)
- Qatar, Saudi Arabia and the GCC blockade
(カタール、サウジアラビアと GCC 封鎖)(注6)
- Sovereign risk in Africa
(アフリカにおけるソブリン・リスク)(注7)
言及されている範囲が広範囲に渡るため注釈が増えてしまったが、それぞれのトピックが概ね独立して書かれているため、興味のあるトピックだけつまみ読みしても有益な知識や情報が得られるであろう。海外にビジネスを展開されている企業(もしくは進出予定の企業)の方々には特にご一読をお勧めしたい。
■ 報告書本文の入手先(PDF50ページ/約5.5MB)
http://www.aon.com/2018-political-risk-terrorism-and-political-violence-maps/index.html
(上記URLにアクセスして下の方にスクロールして「Download Full Report」をクリックし、名前やメールアドレスなどを入力すると、報告書のPDFファイルをダウンロードできる。)
注1)「エーオン」と読む。http://www.aon.com/
注2)無償だが、名前やメールアドレスなどを入力し、その後にメールで送られてくる認証コードを入力する必要がある。
注3)「生産性パズル」とは世界金融危機以降の生産性伸び率が低迷している(しかも原因がよくわからない)減少をいう。
注4)2018年2~10月までの間にラテンアメリカ諸国において大統領選などの重要な選挙が12回もある。
注5)主に先進国が対象であった航空機のリースが開発途上国に広がるとともに、政治リスクなどの影響で資金を回収できなくなるリスクが増えるという指摘。ちなみに原文の「grounded」には、飛行機に対して飛行禁止にする、もしくは離陸させず地上に待機させるという意味がある。
注6)GCC とはバーレーン、オマーン、カタール、UAE などアラビア湾岸諸国による Gulf Cooperation Council(湾岸協力会議)の略で、本報告書では GCC 加盟国によるカタール封鎖の影響について分析されている。
注7)ソブリン・リスクとは国家に対する信用リスクのことで、国(政府や政府関係機関など)に対する投融資が回収できなくなるリスク。
(了)
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