「まとめて任せる」――外部団体等との連携

災害時は、皆が「何かしたい」という思いでやって来るのに、現地では受け入れる体制すら整っていなくて、連携がうまくいかない――。東日本大震災では、こうした事例が多く報告されたと聞いていたので、特に専門知識が必要な分野についてではありますが、ある程度まとめて専門団体等に任せた方がいい、と考えました。もちろん、そうした団体とは平時から「任せ、任せられる関係」を築いておかなければならないわけですが、例えば、水道管の被災状況などは一般職員が聞いたところでとても理解できません。ならば、その分野については、水道関係の団体に任せて、市役所の職員は他にやるべきことをしっかりやることが大切だと感じました。
また、民間企業等に委託できることは、どんどんアウトソーシングしていかないと、職員が疲弊してしまいます。特に発災直後は、水道水が出ないといった問い合わせや、義援金や支援物資をどこに持っていったらいいかというような電話が殺到したため、早い段階でコールセンターを設置するよう指示を出しました。実際に水道に関しては、4月24日以降「水が出ない方専用コールセンター」として約7000件の問合せに対応しました。

リソースを見極める――他自治体等からの支援

合わせて、「リソースを見極める」ことも重要です。今回の災害対応にあたっては、自衛隊との連携も重視しました。自衛隊も、益城町や西原村など、被害の大きかった地域に多く行かざるを得ないということは理解できましたから、熊本市にはどのくらいのリソースを支援していただけるのか、市役所のリソースはどのくらいあるのか、ということは、常に考えるようにしていました。
熊本市役所の職員は約6,400人いますが、本震時は、前震の対応で職員も疲労していて、交代で休ませていたことや、被災の状況も勘案し、動ける職員はごく一部だろうと見積もりました。どのくらいマンパワーを増強するのか、ということは、政府にも依頼しなければいけないし、他自治体の協力も得なければならないので、特に気を遣った点です。しかし、本震翌日は土曜日で、どこの役所も開いていなかった。そんな時、最初に連絡をとり合ったのが千葉県千葉市の熊谷市長でした。
朝4時過ぎくらいだったと思いますが、熊谷千葉市長から連絡があったので、当初物資の集積場となっていた県民総合運動公園の場所を伝え、「どれだけでもいいので、水と食料と毛布をここに送るよう指示を出してください」とお願いしました。また、指定都市市長会にも話を繋いでいただき、そこからの応援についても早い段階からいただけたのは非常に心強かったです。

課題を残した支援物資の管理・配送

支援物資の管理・配送に関しては、正直、最初の3日間くらいまでは完全に行き当たりばったりでした。自衛隊に物資をハンドリングしていただけるようになってから、ようやく回り始めたのが実状です。関係団体にも早い段階から応援要請を行っていましたが、ゴールデンウィークに入るということもあり、人員確保などが十分でなかったため、5月初旬までは自衛隊に協力いただかざるを得ませんでした。当初は物資を運んでくるトラックも、現地に着いてから荷物を下ろすまでに6時間以上待たせている状態でした。運転手の方は何時間もかけて物資を運んでくださっているのに、受入側の問題で長時間お待ちいただいていましたから、職員にはしっかりお詫びして回るよう伝えました。現場にはフォークリフトもない、パレットの用意もない状況で、それを揃えるだけで数日かかりました。物資は早く届きましたが、管理・配送する方がさばけなければ意味がない、いわゆる「ラストワンマイル」がうまくいかなかったというのは、今回の対応の最大の課題です。
また、被災から数日が経つと、物資不足の状況から一転、今度は突然、物資の洪水に襲われました。その結果、熊本市では、発災から約1週間が経過した21日には、物資の受入をストップすることになります。この問題については、できれば今後は、比較的距離の近い地域からまず水や食料を配送して、それ以外のものを遠くの地域から配送するように、応援・受援の体制を見直していくことが大事だと思います。現在、九州市長会防災部会でも必要な体制整備について、具体的に準備を進めているところです。