メディカルディレクターの葵氏は取材当日に帰国したばかりだった

相談あればベストな判断を提供

医療については、26カ所のアシスタンスセンターをつなぎ、24時間365日、全世界の顧客に医師が応対している。また、資源開発関連など陸や海にかかわらず僻地で大掛かりなプロジェクトがある時には、敷地内にクリニックを設置することも可能。医師や看護師、医療機材や薬剤を同社がパッケージで手配するという大がかりなもの。初期診療が簡単に受けられない場所でも安心して働ける環境を作る。

メディカルディレクターの葵佳宏氏は顧客に対し「会員は、とにかく何かあれば当社のアシスタンスセンターに相談してほしい」と語る。病状の早期であればあるほど、選択肢が広がるため、ベストな対応をアドバイスできるからだという。過去の経験では、指の損傷を現地の病院で治療を受けていたが、送られた写真を見て指の壊死(えし)が進んでいたため、急きょ医療先進国での受診を勧めたケースがあったという。別のケースでは、インドのニューデリーにおいて交通事故で骨盤を骨折。本人は日本での治療を希望したが、「長距離の搬送はかえって危険。ニューデリーであれば、現地で十分な外傷治療が可能」と判断。リスクとコストも考慮し、現地治療をアドバイスした。

「『適した時間』に『適した場所』で『適した医療チーム』による治療につなげることが重要」と葵氏は説明。必ずしも、医療先進国に移ったり、帰国しての治療がいいとは限らないけれども、反対に現地で自己判断で治療を受け、こじらせてしまうことも多くあるという。「何かあれば私たちに相談すれば、ベストな選択をアドバイスする」と葵氏は呼びかけている。

また葵氏は事前の備えの重要性も指摘。赴任前・出張前に慢性疾患や必要なワクチンの接種などの相談をすることを訴えた。「薬剤や医療用品は国によっては入手困難なこともある」と説明。治療費については、海外では一般的な虫垂炎の手術でも、治療に200万円以上要することが少なくない。大手術や集中治療が行われる時は、あっという間に数百万の医療費にのぼることも。そのため、病院にインターナショナルSOSが支払い保証や立て替え払いを行う場合もある。費用が発生した場合の備えとして海外旅行保険に加入する場合は、十分な補償内容・額を選ぶことが大切だ。事前の備え、いざという時の適切な判断のため早めに連絡をする必要性を葵氏は強調した。

インターナショナルSOSでは国別に医療リスクと渡航リスクを地図上に示した「トラベルリスクマップ」をネット上で公開。医療リスクは5段階で評価し色分け。渡航リスクも5段階評価のほか、国全体のリスク評価と異なる地域については斜線で示している。

■「トラベルリスクマップ」のダウンロードはこちらから
http://www.internationalsos.co.jp/travel_risk_map/index.html

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介