伝えるべきは、製品ではなくて知恵
東日本大震災の時に、避難所で寒さをしのぐためにアルミブランケットを羽織っている被災者を見た読者も多いだろう。

備蓄している自治体や企業は多い。アルミブランケットの原理は人体から発する放射熱を利用し、体の周囲の空気を暖め、その空気を閉じ込めることで寒さをしのぐことができるというものだ。しかし、2013年夏の隅田川花火大会がゲリラ豪雨で中止になった時に、このブランケットが誤用された。テレビで確認すると、びしょ濡れになった浴衣の上からブランケットを羽織ってしまっているのだ。着ているものが水にぬれていると、液体を気体に変化させる時に気化熱現象で体温を奪っていく。熱を奪われて下がった体温を、アルミブランケットがいくら放射しても体は暖かくならない。ブランケットそのものが暖かいわけではないからだ。その結果、避難した先の体育館でアルミブランケットを羽織った人が「寒い」と訴える事態が発生した。 

あんどう氏は「水に濡れたら、乾いたものに着替えない限りどんな防災グッズを使っても暖かくならないという基本的なことを知らなくては、正しい対策はとれない。製品ではなく、知恵を伝えてほしい」と話す。

生活の言葉で防災を語ろう

あんどう氏は「防災担当者は、防災の言葉で防災を語るのではなく、生活の言葉で防災を語ってほしい」とする。例えば、なぜ登山では荷物を運ぶためにリュックを背負うのか。これは、「荷物は体から離れて揺れると2倍重くなる」という慣性の法則と作用・反作用の法則に由来する。リュックを背負い、体に密着させて荷物の揺れを抑えることが、重い荷物を運ぶコツなのだ。では、私たちが通常利用しているカバンではどうだろうか。例えば肩掛けのカバンであれば、災害時に肩にかけたまま走ろうとすると、揺れによる反作用が働いて重く感じてしまう。いっそ洋服のなかにカバンごと入れて抱えこんでしまうなど、体に密着させることで荷物は軽くなる。このように、アウトドアを通じた生活の言葉で避難や防災を語るのがあんどう流だ。 

「家族の安全が守られてこそ、企業の担当者は安心して会社に留まることができる。家庭を守れない人には、組織も守れない。想定外に対応するため、生活の知恵を伝えることが、日々の暮らしそのものを守ることにつながる」(あんどう氏)。思わず人に教えたくなるような防災の知恵を従業員に伝えることが、組織の防災意識を変えるきっかけになるのかもしれない。

日本トイレ研究所のWebサイトでも自分で作れる簡易トイレの作り方を公開しているので参考にしてほしい。
■日本トイレ研究所「災害時に使えるトイレの作り方」
http://www.toilet.or.jp/dtinet/311/douga.htm