画像を拡大 日産自動車本社ビル

東日本大震災では、部品供給網の寸断が大きな課題となった。その影響は国内にとどまらず、全世界へと及んだ。その後も、災害がある度にサプライチェーン問題が顕在化している。IT化の進展などにより、製品に使われる部品そのものが複雑になっていることに加え、気候変動などに伴う異常気象が追い打ちをかける。さらに企業では人事により担当が入れ替わり、災害の教訓すら引き継がれていないケースも見受けられる。外部環境、内部環境が大きく変化するなかで、BCPを実効性のある形で運用していくことは容易ではない。日産自動車では、東日本大震災前からの継続的なBCPの取り組みと、過去の災害検証を生かしたサプライチェーン管理の仕組みにより、災害対策に手ごたえを感じ始めているようだ。コーポレートサービス統括部担当部長の山梨慶太氏に聞いた。

日産自動車
神奈川県横浜市

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サプライチェーンが見えなかった

Q:東日本大震災で特に課題となったことはどのようなことですか?

コーポレートサービス統括部担当部長の山梨氏

サプライチェーンが見えなかったということが大きな課題だったと思います。二つの側面があるのですが、一つは、われわれがこれまで付き合っていたサプライヤーさんが把握できていなかったということ。特に三次、四次サプライヤーさんで把握できていない会社がありました。もう一つは、付き合っていることは分かっていたけど、何の車にその部品が使われているのかがすぐに分からなかった会社もあります。東日本大震災では、そうしたサプライヤーさんが被災をして、車が作れなくなってしまいました。

別の課題としては、被災したサプライヤーさんに、他のメーカーと一緒に復旧サポートチームを作って支援に行ったのですが、もともとそのようなチームがあったわけではなく、人選や、いつのタイミングで行くのか、特に原発の問題もあり決死の覚悟で行くような状況だったので、スタートダッシュがうまく切れなかったことが反省点でした。大きく被災したサプライヤーさんが、他社では作れないオンリーワンの部品を製造していたということもありました。そのサプライヤーの複線化も進めていますが、コストなどとの関係で難しい対応が迫られました。

サプライチェーンの一番弱いところは、たった1個の部品がなくても車が作れない、デバイスが作れないというところです。そこを底上げしないとリカバリーは早くできないということを、まざまざと見せつけられたのが東日本大震災です。

Q:自社工場の直接的な地震被害よりは、サプライチェーンの被災の方が対応として大変だったということですね?
自社工場で言うと、福島県いわき市に高級エンジンを作っている工場があるのですが、ここは大きく被災しました。ただし、その後の復旧がわりと早くでき、また、エンジンもいろんな量産車に使っているものではなく、スカイラインのような、かなり大きめの高級車に使っているエンジンで、サプライチェーンが部品を納入するスピードも量産車と比べると緩やかだったこともあり、大きな影響は防ぐことができました。

幸い、車両を組み立てている工場では大きな被害を受けたところはなく、そこは助かりました。逆に、サプライヤーの被災により部品が入ってこなかったがために、車両工場が口を開けて待っているような状態になってしまったということです。