2018/01/12
編集長コラム「うラかたの日々」
少し遅れてしまいましたが、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。
2016年にリスク対策.comのWeb版編集長に就任し、早くも3年目に突入しました。編集長としてまだまだ未熟ではありますが、読者の皆様や関係者の皆様、スタッフやライターの皆様の支えもあり、なんとか2017年を走りきることができたと思っています。心から、謝辞を申し上げます。
今年から不定期ですが、この項で編集後記のようなものを書いていきたいと思います。タイトルは好きな作家であるボリス・ヴィアンの「うたかたの日々」からとりました。編集長という裏方稼業を営むなか、防災・危機管理・BCPの分野で気になったことやトピックスなど、皆さんに少しでもお役に立てる情報を気軽にお届けできたらいいなと思っています。
さて、昨年の忘れられない災害と言えば「平成29年7月九州北部豪雨」が挙げられます。2017年7月5日から6日にかけて福岡県や大分県を中心とする九州北部に降り注いだ豪雨は、41人の犠牲者を出しました。私も数日後に福岡県朝倉市把木地区に入りしましたが、「なぜこんなところまで」と思うほど町中まで流木が散乱し、水害の恐怖を改めて感じたのを覚えています。
それにしても、なぜそのような多くの犠牲者が出てしまったのでしょうか。2016年に発生した熊本地震における直接死が50人だったことを考えると、この数字はとても大きなものです。
住民は、普段から災害対策を怠っていたのでしょうか。もちろんそうではありませんでした。実は同地区は2012年にも豪雨に見舞われており(平成24年7月九州北部豪雨)、その後住民たちは『自分たちの身は自分たちで守る』と、住民主導で独自のハザードマップを作成したり、避難所運営訓練をしたり、非常に意識高く防災活動に取り組んでいたのです。
これは、ある意味とても恐ろしいことなのです。なぜなら、それほど住民たちが意識高く防災に取り組んでいたにも関わらず、今回も多くの犠牲者が出てしまっているからです。住民の防災意識が高くなかったら、いったいどれだけの命が奪われたのか。もしかすると熊本地震を大きく上回る犠牲者が出ていたかもしれません。
「災害は、弱いところを狙う」と言われます。災害が発生すると、都市や町の弱点が大きく露呈されるのです。地震だけではありません。地球温暖化が進んだ昨今、水害は今後さらに局所化し、激甚化していきます。今後、日本各地でこれまでにない豪雨が発生する確率は、極めて高いのです。それらに対し、ハードも含めて新しく打つ手はないのでしょうか。
リスク対策.comは今年、ハード・ソフトふくめた公助と共助の連携のあり方を問い、「新しいレジリエンスの形」を追求するため、さらにコンテンツを強化していきます。2018年も当サイトをご愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。
(了)
(リスク対策.com編集長:大越 聡)
編集長コラム「うラかたの日々」の他の記事
- 災害時の間違ったトイレの使い方。もしかしたら僕が悪かったのかもしれない
- 草津はぜひ活発なリスクコミュニケーションを!
- 神戸とお風呂とオオタカと
- レジリエンスの新しいカタチを目指して
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方