水の力で途切れてしまった線路。福岡県朝倉市にて(撮影:Satoshi Ookoshi)

少し遅れてしまいましたが、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。

2016年にリスク対策.comのWeb版編集長に就任し、早くも3年目に突入しました。編集長としてまだまだ未熟ではありますが、読者の皆様や関係者の皆様、スタッフやライターの皆様の支えもあり、なんとか2017年を走りきることができたと思っています。心から、謝辞を申し上げます。

今年から不定期ですが、この項で編集後記のようなものを書いていきたいと思います。タイトルは好きな作家であるボリス・ヴィアンの「うたかたの日々」からとりました。編集長という裏方稼業を営むなか、防災・危機管理・BCPの分野で気になったことやトピックスなど、皆さんに少しでもお役に立てる情報を気軽にお届けできたらいいなと思っています。

さて、昨年の忘れられない災害と言えば「平成29年7月九州北部豪雨」が挙げられます。2017年7月5日から6日にかけて福岡県や大分県を中心とする九州北部に降り注いだ豪雨は、41人の犠牲者を出しました。私も数日後に福岡県朝倉市把木地区に入りしましたが、「なぜこんなところまで」と思うほど町中まで流木が散乱し、水害の恐怖を改めて感じたのを覚えています。

それにしても、なぜそのような多くの犠牲者が出てしまったのでしょうか。2016年に発生した熊本地震における直接死が50人だったことを考えると、この数字はとても大きなものです。

住民は、普段から災害対策を怠っていたのでしょうか。もちろんそうではありませんでした。実は同地区は2012年にも豪雨に見舞われており(平成24年7月九州北部豪雨)、その後住民たちは『自分たちの身は自分たちで守る』と、住民主導で独自のハザードマップを作成したり、避難所運営訓練をしたり、非常に意識高く防災活動に取り組んでいたのです。

これは、ある意味とても恐ろしいことなのです。なぜなら、それほど住民たちが意識高く防災に取り組んでいたにも関わらず、今回も多くの犠牲者が出てしまっているからです。住民の防災意識が高くなかったら、いったいどれだけの命が奪われたのか。もしかすると熊本地震を大きく上回る犠牲者が出ていたかもしれません。

「災害は、弱いところを狙う」と言われます。災害が発生すると、都市や町の弱点が大きく露呈されるのです。地震だけではありません。地球温暖化が進んだ昨今、水害は今後さらに局所化し、激甚化していきます。今後、日本各地でこれまでにない豪雨が発生する確率は、極めて高いのです。それらに対し、ハードも含めて新しく打つ手はないのでしょうか。

リスク対策.comは今年、ハード・ソフトふくめた公助と共助の連携のあり方を問い、「新しいレジリエンスの形」を追求するため、さらにコンテンツを強化していきます。2018年も当サイトをご愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。

(了)

(リスク対策.com編集長:大越 聡)