気候変動によって文明社会のかたちが大きく変わる(写真:写真AC)

■このパートで考えること

これまで、気候変動がもたらすリスクをみてきました。すでに起こっているもの(台風・豪雨)、これから一層激しくなると予想されるもの(熱波・干ばつ)、知らない間に危機が忍び寄ってくるもの(海面上昇)など、実にさまざまではあります。しかしこれらは、気候変動が作用する多種多様なリスクの中でも顕著なものだけを取り上げたに過ぎません。

すでに述べたように、気候変動は大気だけでなく海洋にも悪影響を及ぼします。そしてその影響は私たちを取り囲む広範な生態系と自然環境にも連鎖します。筆者は登山を趣味としますが、この30年の間に山が大きく変化してしまったことに戸惑いを覚えます。

昔なら夏山は「避暑」を目的として登ったものでしたが、今日の夏山、例えば快晴無風の3000メートルの稜線は、時にサウナに入っているような、あるいは焼けたフライパンの上でも歩いているような異常な熱さを感じることがあります。

山岳地帯にも変化が(写真:写真AC)

昔は清涼な空気に癒やされた雪渓も、場所によってはすっかり消滅し、落石が頻発するカラカラに乾いた谷と化しています。近年多発する台風・豪雨によって土砂が流出し、倒木が増え、通行止めとなった登山道や林道も枚挙に暇がありません。だんだん山が遠ざかっていくような寂しささえ覚えます。

このように個人的な体験として実感できるほどに、気候変動の影響はかなり鮮明になってきているのです。ましてや地球規模での経済活動がこの影響を受けない、そして多くの企業が気づかないはずはありません。そこで今回からは、企業が災害の危機を乗り越えるための最後の砦であるBCPと気候変動対策について考えていきたいと思います。