未来の防災を担う若者3人にインタビューしました!左から横浜で防災に取り組む高校生、成田直央さん。2018年準ミス・インターナショナル日本代表の齋藤コスモさん。日本赤十字社医療センター救命救急センター の鷺坂彰吾先生。(画像提供:成田さんと鷺坂さんはご本人。齋藤さんは一般社団法人国際文化協会)

地域の防災・減災の現場では、メンバーが固定化してしまって、若い人がほとんどいないという声もよくお聞きします。もっとも、子育て世代向けの講演が多い私は、子育て世代は、防災・減災に関心を持っている事を実感していますが、10代〜20代の方や独身の方はどうなのでしょうか?

今回は、防災・減災の現場でお会いした素敵な若者3名にインタビューいたしました♪

彼らの新しい視点や切り口、そして熱意は、きっとどの世代の方にも刺激的だと思います。そして、中高生のお子様がいらっしゃる方は、こどもたちにこんな先輩たちがいることを伝えていただけたら嬉しいです!

ということで、トップバッターはこの方!横浜市立某高校の2年生、成田直央(なりた・なお)さんです。

学校の制服姿の成田さん。若い! (画像提供:成田直央さん)

成田さんは、現役高校生でありながら、家庭防災員、地域防災拠点運営委員、磯子区災害ボランティア、横浜防災ライセンス・磯子など、防災の肩書きがいっぱい!地域を中心に防災・減災の活動をされています。そんな彼がなぜ、防災・減災に興味をもつようになったか、気になりますよね。うちの地域にもこんな子欲しいと思っているみなさまのために、インタビューしました♪

―― 防災・減災に興味をもたれた時期ときっかけについてお聞かせください。

自分でも「時期」や「きっかけ」というものは、定かではありません。おそらくですが、小学校のころによく消防署に通っていたので、消防のイベントなどを通して、防災の分野に興味を持ったのだと思います。また、小学生のころから、郷土史研究が趣味で、横浜が被災した関東大震災の惨状を文章・写真等でよく見ていました。それで自然と防災意識が高まっていたのかもしれません。ただ実際に活動を始めたのは、高校入学後です。

防災イベントで活動されている成田さん(画像提供:磯子区災害ボランティアネットワーク)

―― 小学生のうちから防災の分野に興味をもたれていたのですね!そして、郷土史研究が趣味ってしぶくてかっこいい小学生ですよね。私も言ってみたい、そのセリフ。防災・減災の活動を始めて、感じたことはありますでしょうか?

防災をやっていくなかで、さまざまの分野の方々にお会いします。そうした中で、「この分野の方も、防災のこの部分で関わりがあるのか」と感じる場面が多々あります。実際に防災というのは、一分野の科学のみならず、災害・事象のメカニズムやデータ、傾向、記録・古文書等の文献や法律・政策・社会的知見等の全科学が、すべて組み合わさることによって成り立つ、総合科学だとおもいます。ですから、防災という一つの分野は一見して狭いとおもわれがちですが、意外と視野を広げてみ見ると、きりがないほど広い分野だと感じました。

―― 防災は自然科学のみならず、社会科学も含め全分野に及ぶとはよく言われはしますが、それを高校生の段階で体感している成田さんの先見性がまぶしいです♪そんな成田さんの今後の夢や希望はなんでしょう?

最終目標は、横浜市消防局に入庁。予防課や各区の危機管理担当・危機管理室出向の消防吏員として、市民防災力・地域防災力・行政の災害対応力向上に努め、消防局が掲げる「安全・安心が実感できる都市ヨコハマを目指して」を、退職までに少しでも実現させることです。そのために来年度は、防災から一度身を引き、大学で防災の楚となる都市・危機管理等を学ぶために、受験勉強に専念します。

そして、大学入学後は、さらに広い視野で地域防災活動を行うために、消防団へも入団し、地域防災の現状・課題を細部まで洗い出して、大学卒業後の目標達成のための糧としていきたいと考えています。

将来の目標は横浜市消防局で防災・減災に取り組むこと。(画像提供:成田直央さん)

―― おおお!とっても具体的でやっぱりまぶしい成田さんなのです。あとに続く若者たちへのメッセージはありますでしょうか?

ひとたび災害が発生すれば、普段頼りにしている地方自治体のほか、消防や警察はパンク状態になってしまいます。その時に地域で救助活動や支援、避難所運営をするのは、地域の人たちです。その地域の人たちの中には、中学生・高校生の皆さんも含まれています。まずはぜひ、地域の防災訓練に参加し、地域でどのような防災活動をしているかを知り、地域の防災団体の仲間に加わってください。地域防災の要は、中高生の皆さんです。地域の方々は、皆さんの活躍に期待しています。

―― 大人に言われてしぶしぶ参加するのと違って同じ世代からの呼びかけだと心に響きそうですね!その他、みなさんにお伝えしたいことってありますでしょうか?

少子高齢化にともない、地域防災の担い手の高齢化が言われるなか、近年発生した災害において中高生が避難所運営・復旧等でも活躍したことから、中高生が今後の地域防災の担い手として注目されています。しかし発災直後はどうでしょうか。

私たち高校生は、平日の日中、家から離れた高校にいる場合が多いため、発災直後に地域にはいません。また、小学生・中学生も、親が引き取りに来るまでは、学校は児童・生徒の安全確保のため、校外へは出せません。

そのため、もし平日の日中に発災すれば、結局は発災直後の一番力を必要とするときに、せっかくの担い手がいない状態のまま被災してしまいます。また、頼りの消防団も数が限られているため、すぐに救助・消火に来て下さるとは限りません。そうなると、地域内の救出・救護・消火は、日中に地域内にいる、主婦・お年寄りが担うという、厳しい現状があります。

こうした中で、これからの地域防災は、若い力に期待しつつも、主婦・お年寄りの方々が、確実な避難・安全確保後に、救出・救護・消火をできるように、訓練を通して、技術を身に着けていくと同時に、そうした事案を発生させないように、各家庭で防火対策・家具転倒防止・確実な避難を出来るようにしておくといった、自助の備えを十分に行う必要性があると感じます。

私たちは、今後予想される首都直下型地震や南海トラフ地震で、想像を絶する被害に直面し、改めて、自然の脅威を前にして、人間の無力感を実感することでしょう。そうした中で、被害をなるだけ最小限に抑えていくのは、発災前にどれだけ一人一人が「自助」の十分な備えを行い、自助を行っても損なってしまう部分を、どれだけしっかりと「共助」で補強していけるかだと強く感じています。

私たちには、「いつか来るその日」までの時間はもう残っていません。そうしたなかで、防災に携わる私たちが、その日までにできることは、意識のない方々に対して、どれだけ啓発していけるかだと思います。

―― とのことです♪成田さんは、しっかりしているから、まわりの方から高校生に見えないなんてこともよく言われている方なのですが、理路整然とした中にも、若者として、若者だけに頼りすぎないよう、地域のみなさまの自助や共助を訴えられているのがすごいなあと思いました。地域のみなさまにも声が届きましたでしょうか?