■たかが1℃ではなかった
IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)の報告によれば、今日の世界の平均気温は産業革命前に比べ、1℃高くなっているといいます。しかし私たちの多くは、この「1℃」という数字に衝撃を受けることはほとんどありません。
「1℃だって? それがどうした?」で終わってしまう。「1℃どころかプラスマイナス5℃も10℃も気温差のある日だってあるではないか」。これが私たちの気温に対する常識的な見方ではないでしょうか。
であるならば、自己流のたとえ話で恐縮ですが、この問題を「気温」を「体温」に置き換えてみると1℃の重みが分かるかもしれません。
例えばあなたの平均体温が36.5℃だとします。ある日、何となく体がだるく熱っぽい気がする。体温計で測ったらいつもより1℃高くて37.5℃あった。このときあなたは「風邪薬を飲んだ方がよさそうだ」「今日は残業せずに定時で帰宅しよう」あるいは「大事をとって会社を休むか…」などと考えるに違いありません。
37.5℃は危うさを感じる数字ではあります。少し無理をすれば、すぐに38℃に達して高熱が出てしまうかもしれない。直感的にそう思うからです。ましてやこれが、平熱よりも2℃、3℃高いということになれば、命の危険さえ考えなくてはならない。
このように、自分の体温が平熱に比べて1℃高くなった状態というのは、私たちが何となく体の不調を感じ、風邪薬を飲んで安静にした方がベターだと考えるレベルなのです。「たかが1℃」ではありません。
しかし、これでもあまりピンとこないという方のために、世界平均気温が1℃上昇した状態をもう一つ別の側面から例えてみます。
地球という生命体が、温室効果ガスという保温効果の高い衣服をまとっている。降り注ぐ太陽の熱は、宇宙には逃げずにすべてその衣服に吸収されて体中が火照ってたまらない状態。しかし地球自身はその衣服を脱ぎ捨てることはできないため、新陳代謝もうまくいかず、体が変調を来しはじめている。それが今日の地球の姿です。
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