災害に遭うときの「結果」と「過程」を先に考える

まずは河川の決壊で自宅が2メートル浸水する可能性を考えてみましょう。その状況に至る前にどのようなことが「過程」として起こるでしょうか?「○○が起こる前には○○が起こるはず」といったようにひととおりさかのぼっていきます。例えば、「自宅が浸水する前には河川が決壊しているはず」と考えることができるでしょう。その状況の前には「水位が堤防ギリギリまで上昇している」ことがあり、その前には河川の流域で大雨となることが「過程」として考えられます。このような「過程」をまとめたのが次の図です。

写真を拡大 図2. 河川洪水による被害が発生するときの「過程」を先に考えた例

では、土砂災害の「過程」は何が考えられるでしょうか。河川洪水の場合よりは抽象的になるのですが、土砂災害が起こる前には崖や渓流沿いの土砂が今にも崩れそうな状況になっているはずです。その前には土壌中の水分量を上昇させるような大量の雨が降っていることでしょう。そうしたことが「過程」として考えられます(下図参照)。

写真を拡大 図3. 土砂災害による被害が発生するときの「過程」を先に考えた例

被害に至る「過程」を考える際には、紙に書き出して整理してみといいでしょう。その上で、それぞれの「過程」を示す手がかりが警戒レベルなどの情報の中でどれに対応するか探していきます。まずは河川洪水のケースから見ていきましょう。

河川洪水の「過程」と情報の対応

河川洪水の「過程」は、「大雨が降る」→「河川の水位が上昇して危険になる」→「河川が決壊する」→そして「浸水の影響を受ける」というものでした。これに対応させる形で、「大雨が降る手がかり」「河川の水位が上昇して危険な状態を示す手がかり」「河川が決壊したことを示す手がかり」を探していきます。

例えば「河川がどこかで決壊する」という状況は、警戒レベル5相当として発表される「氾濫発生情報」が対応します。その前段階である「河川の水位が上昇して今にも決壊しそうな状態になる」というのは、「いつ氾濫してもおかしくない状態」を意味する「氾濫危険情報」(警戒レベル4相当)が手がかりになるでしょう。河川の水位はインターネットなどで閲覧できるので、水位が非常に高い状況だというデータも「今にも決壊しそうな状態」かについて見極める重要な要素です。

では、「河川の水位が大きく上昇するような大量の雨が降る」というのは何に現れるのでしょうか? 河川に特化した情報である「氾濫警戒情報」(警戒レベル3相当)や「氾濫注意情報」(警戒レベル2相当)というものの他にも、多いところでこの先何ミリ程度の降雨となるのかを示す気象庁発表の「気象情報」などが参考になるでしょう(気象情報について詳しくは過去の記事https://www.risktaisaku.com/articles/-/32457をご覧ください)。台風などの際には一般の気象ニュースや気象庁などの報道発表でも予測雨量の見込みが伝えられるので、そうしたこともまた、手がかりの一つとして利用できます。

上記のことをまとめたのが次の図です。図の左側は自分の言葉で整理しておいた災害発生までの「過程」、右側の緑の点線で囲まれた部分がそれに対応する防災情報です。試しに左側部分を隠して、防災情報のところだけに注目してみてください。情報の名称を見て自分に影響する「過程」を思い描くのは難しそうな印象を受けないでしょうか? 情報名から「過程」を理解するよりも、「過程」を先に整理しておいて情報を選択した方が、自分のこととして認識しやすくなるメリットがあると思います。

写真を拡大 図4. 河川洪水による被害が発生するときの「過程」に手がかりとなる情報を当てはめた例