第110回:米国の投資顧問業におけるBCPの実態
The Investment Adviser Association / Investment Management Compliance Testing Survey
合同会社 Office SRC/
代表
田代 邦幸
田代 邦幸
自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年より複数のコンサルティングファームにて、事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関するコンサルティングに従事した後、独立して2020年に合同会社Office SRCを設立。引き続き同分野のコンサルティングに従事する傍ら、The Business Continuity Institute(BCI)日本支部事務局としての活動などを通して、BCMの普及啓発にも積極的に取り組んでいる。一般社団法人レジリエンス協会 組織レジリエンス研究会座長。BCI Approved Instructor。JQA 認定 ISO/IEC27001 審査員。著書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)
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米国の投資顧問業協会(The Investment Adviser Association:IAA)は、会員の組織におけるコンプライアンス担当者を対象として「Investment Management Compliance Testing Survey」(投資運用コンプライアンステスト調査)という調査を毎年実施し、その調査結果を2009年から公開している。
今年は特に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響下における事業継続への関心が高まったことから、BCPに関する設問を拡張して調査が実施されたので、本稿ではこの調査結果を紹介する。なお調査は 2020年4月20日から5月31日までの間にオンラインで実施され、384の組織から回答を得ている。
まず前提として、「文書化されたBCPがあるか?」という設問に対しては回答者の約99%に当たる377の組織がYesと回答している。そして図1はさらに、回答者の組織におけるBCPがどのような事態を取り扱うかを尋ねた結果である(注1)。
なお、この設問においては「BCP」が「Business Continuity Planning」の略語となっており、文書化した計画そのものではなく、事業継続に関する計画に取り組む活動という意味で用いられている。そのためか、「致命的な影響がある外部のサービスプロバイダーの特定」(Identification of critical third-party service providers)といった、BCPを作る前に行う作業が混在している。
図では次の3つが上位となっているが、いずれも僅差であり、さまざまな事象を視野に入れてBCPに取り組まれていることが、改めて分かる。
- 施設全体にわたる途絶(例えば停電、ブラックアウト、火災)(注2)
- 個別のサービス(例えば電話やインターネット、ファイルサーバー、リアルタイムでの情報フィードなど)の個別サービスの途絶
- 自然災害(例えばハリケーン、地震、洪水)
また、「後継者問題」(Succession planning)という回答が168件(約46%)、また少ないながら「解散などで事業を縮小する際に顧客の資産を別の機関に移す」(注3)という回答があることも注目に値する。いずれもコンプライアンスという観点ならではの設問と言えよう。特に後者については、事業を継続させるというよりも、継続できないときでもいかに顧客の資産を守るかという、投資顧問業としての責任を果たすための計画ということであろう。
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