日系企業は中国の環境政策にどう対応するか(写真:写真AC)※写真はイメージです

中国に進出した日系企業に日々起きている事象を参考にして、どのように環境対策を成功させるべきかを考察している本連載。ここ3回ほどは中国の法制度について解説しましたが、今回はまた具体事例をあげながら皆さんと共に考えていきたいと思います。

■事例1
現地スタッフが嘆く「環境に関心の低い総経理」

この工場は、2004年に設立された日系独資企業です。北は瀋陽から南は広州まで、幅広く展開をしている自動車関連パーツを製造する企業です。

当社は他社の総経理の紹介により、この工場の環境現場診断を行うことになりました。工場を訪ね、工場内を巡回し、環境現場診断のための調査を行いました。この企業は2019年暮れに環境に関する行政処罰を受けており、それ以降行政当局に目を付けられているためか、担当者はかなりビクビクしている様子でした。

診断の結果、予想通り数多くの問題が発生していました。しかしその後、年始より発生したCOVID-19の影響で、報告会(当社スタッフが訪問し報告書を詳細に説明するサービス)をしばらく開けませんでした。ようやく先月、お伺いして説明できたところです。

説明会には、総経理と環境担当のスタッフ2名、通訳1名の計4名が参加され、説明言語は中国語でと指定されました。パスワードで管理された報告書は、事前に当社より電子メールで送信済みでした。説明会まで十分な時間があったため、担当のスタッフは現状についてよく認識はされていました。

工場の環境現場診断の結果は(写真:写真AC) ※写真はイメージです

当社の説明が終わった後の感触としては、総経理が比較的年齢も若く、まだ赴任1年程度ということもあるのでしょうか、昨年処罰を受けている割には責任者の認識が乏しく焦りが感じられない気がしました。当社が提出した報告書に問題点は指摘済みであり、本来ならば、早急に対応策を練っておいてもよいのではいかと思っていたのです。

現地スタッフはサポートを希望も(写真:写真AC) ※写真はイメージです

ところが報告会の後、環境担当スタッフに状況を伺ってみると、2名とも即席に任命されたスタッフだったようで、本来は違う部署のスタッフでありながらの「兼任」だったことが発覚。従って、彼らが環境に関する知識が乏しく、あらかじめ対応策を考えることが難しかったのは無理もない状況でした。

しかしながら、現地の中国人であるためか、自社の環境上の問題点については今回の報告書で十分に理解していて、事の重大さも分かっているようでした。それゆえ、彼らとしては引き続き当社のサポートを希望し、年間コンサルティングサービスが必要だと言ってくれていました。しかし総経理としては、環境対策は優先事項ではないのでしょうか、今日までご回答はいただいていません。

このままの状態を続けた場合、再び環境局の査察によって処罰を受けてしまうであろうことは間違いないと思われます。